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植物は光をどのように利用するのか?

 植物は、太陽光のエネルギーを利用して、光合成といわれる生体反応によって、水を分解し、酸素や糖などの有機化合物を生産しています。ここで生産された酸素や有機化合物は、進化の過程で呼吸をつかさどる真核生物の出現をも促し、現在の地球の生態系を形成してきました。

光エネルギーを捕獲して化学エネルギーに変換する装置は、葉緑体内にある数種類のタンパク質複合体から作られています。このタンパク質複合体には、光を捕獲する色素や、マンガンや鉄をといった遷移金属を含む酸化還元物質が整然と機能的に収納されていて、タンパク質複合体内あるいはそれらの間の電子やエネルギー等の流れが方向性をもって効率良く行うことに役立っています。

また、光はエネルギーとしてだけではなく信号としても利用され、植物の芽生え、生殖、成長などほとんどの生体反応に重要な働きをします。植物が光をどのように利用するかを研究することは、生物がどのように環境に適応できるのかというモデルケースとして重要な知見を与えるだけではなく、生物を模した機能素子の開発にもつながります。 → 詳細

植物が寒さに強くなるしくみ

植物の中には、0℃以上の低温(2〜4℃くらい)にさらすと、その後の凍結に耐えうるものがあります。低温にさらされている間に、植物は糖分やアミノ酸を細胞中に貯め込んで凍りにくい状態にしたり、細胞の外側(細胞壁など)に氷を作らせるような物質を蓄積し、細胞の中に氷ができないような工夫をしています。このメカニズムを「低温馴化」といいます。  

しかし、低温を感じてから、糖分やアミノ酸などを細胞内に貯め込むようになるには、どのように命令が伝わるのかはっきりしたことは分かっていません。また、細胞膜が堅くなることで植物は低温を感知していると考えられていますが、その仕組みもまだよく分かっていません。  

そこで、私たちの研究室ではシロイヌナズナという植物を用いて、ある遺伝子を活性化することでその遺伝子がコードしているタンパク質を過剰に発現している形質転換植物を作り、特に凍結に対して強くなっている植物体を見つけだそうとしています。そしてどの遺伝子が活性化されたか(多く発現しているか)を調べることで、どのようなタンパク質が低温馴化に関わっているかを明らかにすることができます。  

植物が凍結に対する耐性を獲得するメカニズムが分かれば、凍結以外にも乾燥・塩・高温などのストレスに共通した、植物のストレス応答の仕組みの解明につながり、将来的には様々な環境に適応した作物の作出などにも応用できると考えられます。 → 詳細

環境ホルモンがクラミドモナスの性分化に与える影響

環境ホルモン(内分泌かく乱物質)は、環境中の合成化学物質のうち、生物の体内に取り込まれるとまるでホルモンのように働いて生殖機能などをかく乱するおそれのあるものを指します。ヒトへの影響は報告されていませんが、フロリダではオスの ワニの生殖器が短くなり、日本ではイボニシという巻貝でオス化が確認されたという報告があります。
そこで本研究では、クラミドモナスという緑藻を用いて、環境ホルモンであるノニルフェノールとオクチルフェノールがどのような影響を及ぼすかを調べています。

クラミドモナスは光合成を行う植物的特性と二本の鞭毛で自由に動き回る動物的特性を併せもっています。雌雄異株で、雌は mt+ (プラス型)、雄は mt- (マイナス型)と区別されていますが、見た目では雌雄どちらか分かりません。通常は半数体で存在し、両株それぞれが体細胞分裂により増殖しますが、周りの環境が悪くなると配偶子細胞に分化し、雌雄の配偶子細胞が接合して、遊走接合子となります。

これまでの実験の結果、環境ホルモンを添加することにより、接合率が増加することが分かりました。また、配偶子へ分化し遊走接合子となる間に発現する遺伝子についても調査しています。 → 詳細

共生藻が窒素源を利用するしくみ

淡水産刺胞動物グリーンヒドラ Hydra viridissma は、細胞内にクロレラ様藻類 ( 形態的に Chlorella vulgaris といわれる ) を共生させており、宿主と共生藻を分離できることから、古くから共生の研究に用いられてきました。細胞内共生の研究が進んでいるミドリゾウリムシでは、ミドリゾウリムシ内の共生藻の数によって走行性が逆転するという共生生物独特の現象や、日本産のミドリゾウリムシから単離した共生藻は、硝酸、亜硝酸、一部のアミノ酸を生育に利用できないことなどが報告されています。  

グリーンヒドラは飼育が容易で、細胞内共生の研究に用いるには良い実験材料ですが、グリーンヒドラの共生に関する主な研究はヒドラ側から論じられたものが多く、共生藻は単離・培養が困難とされ共生藻側からの研究はほとんど行われていません。そこで、本研究では昨年グリーンヒドラから分離した共生藻を用いて、その完全な単離と生理的特徴の解明を試みています。 → 詳細

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