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環境ホルモンがクラミドモナスの性分化に与える影響

単細胞の緑藻クラミドモナス ( Chlamydomonas reinhardtii ) は、細胞内に 1 個の葉緑体を持ち、光合成を行う植物性特性と2本の鞭毛で動き回る動物性特性を併せ持っています。 mt + 株 ( 雌株 ) と mt − 株 ( 雄株 ) が存在し、栄養条件の適切な培地ではそれぞれ無性的に増殖を行いますが、アンモニウムイオンなどの窒素源を除いた状態で光を照射すると、 mt + 株と mt − 株がそれぞれ配偶子へと分化し、両方の mt (メイティングタイプ)を混合すると、鞭毛凝集や細胞壁の離脱、細胞融合などの接合 ( メイティング ) 過程を経て、鞭毛が4本の遊走接合子となります(図1)。


図1 クラミドモナスの生活環

本研究では、環境ホルモンとして知られ、界面活性剤の分解産物である 4- オクチルフェノール分岐型 ( t- OP) が、クラミドモナスの配偶子形成・接合に与える影響について研究しています。 t- OP は 高濃度域で水生生物に対して強い毒性を示すことが報告されています。また、 10^-11 M 程度のごく低濃度域では内分泌攪乱化学物質として、生物の生理・生殖機能に影響を与えることも知られています。

まず t -OP を含む培地でクラミドモナスを培養すると、 無添加のものに比べ、 7×10^-6 M 、 8×10^-6 M の t -OP を添加した場合に、対数増殖期へと移行するまでの時間 がそれぞれ 4 日と 6 日遅れることが分かりました。 10^-5 M の t -OP を添加したものでは、細胞死が観察されました。

次にクラミドモナスの配偶子誘導中に t- OP を添加したところ、 10^-9 M 〜 10^-7 M の濃度域で接合促進がみられ、 5×10^-8 M で最も促進することが分かりました。女性ホルモンである 17β- エストラジオール (E2) でも 5×10^-11 M 程度で同様の結果が得られました。

また、エストロゲンのアンタゴニストである 4- 水酸化タモキシフェン( OHT )を用いて、 t- OP や E2 による接合の促進効果にどのような変化が現れるか調べた結果、 10^-10 〜 10^-6 M の OHT を t -OP とともに添加すると、 OHT は t -OP による接合の促進を著しく抑制し、 E2 に対しても同様の効果がみられました。

これらのことより、 t -OP はエストロゲン様受容体を介して接合を促進していることが考えられ、 t -OP の内分泌攪乱作用と、クラミドモナスではまだ報告されていないステロイドホルモンの関与が強く示唆されました。

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