PLOS ONE
Thrombospondin Type-1 Repeat Domain-Containing Proteins Are Strongly Expressed in the Head Region of HydraKayoko Hamaguchi-Hamada, Mami Kurumata-Shigeto, Sumiko Minobe, Nozomi Fukuoka, Manami Sato, Miyuki Matsufuji, Osamu Koizumi, Shun Hamada
- Published: April 4, 2016
- http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0151823
ヒドラは、単純な体の作りと、強い再生能力をもつため、発生研究のモデル生物として古くから研究されてきました。
ヒドラの頭部は、発生再生現象における形成体(オーガナイザー)としての役割を担う重要な領域です。
また、ヒドラの神経系は神経細胞が散在して互いに神経突起を網目状に伸ばし連絡している散在神経系です。散在神経系は神経節や脳を持たない単純な神経系だと考えられていますが、今回実験に用いたHydra oligcatisのようなヒドラでは神経線維束を形成して円周状に走る神経構造−神経環−が頭部に見られます(左図)。神経環は神経系の集中化の始まりを示す構造ではないかと考えられています。
私達は、これらヒドラ頭部の発生・神経生物学的重要性に鑑み、頭部で特異的に発現する遺伝子をサブトラクション・クローニングという方法を用いて調べました。その結果、意外なことにThrombospondin Type-1 repeat domain (TSR ドメイン)が含まれる遺伝子が頭部に多数発現していることを見出しました。TSRドメインは約60アミノ酸残基からなるドメインで、細胞間や細胞ー細胞外マトリックス間の相互作用を形成するために働いています。TSRドメインを持ったタンパク質は原生動物から脊椎動物まで様々な動物種で同定されています。これらのタンパク質は、細胞移動、細胞接着、神経軸索誘導などの機能を有しています。今回ヒドラの頭部で見出された17個のTSRドメインタンパク質(図1)も、上記のような機能をもっているのではないかと推測されます。