本の紹介


  「ビッグ・ベン」(正式名称:エリザベス・タワー)や「タワー・ブリッジ」、「バッキンガム宮殿」など、ここ1、2ヶ月の間に幾度となく放映されたロンドンの光景が、まだ目に焼きついている方も多いのではないでしょうか。徒歩で移動可能なほどの狭い区域に、イギリスを象徴する歴史的建造物やオフィスビル群、そして「ロンドン・アイ」のような最先端技術を用いた巨大な観覧車などが入り混じる現在のロンドン中心部の街並みは、7月27日から8月12日までのオリンピック開催期間中、世界中の人々の注目を集めました。今回は、ロンドンのことをさらに深く知るための3冊の本を紹介します。
 

 オリンピックが開催されている間、衛星放送やインターネットなどを通じ、世界に配信されたロンドンに関する情報の多くは、真っ赤な2階建バスや、歴史ある建物など、観光地としてのロンドンを強く印象づけるものでした。そんな誰もが知るロンドンのイメージではなく、地元の人に愛されるカフェやレストラン、表通りから一歩入ったところにある小さな本屋などを多数紹介する本書は、生活の場としてのロンドンの今の姿を色鮮やかに伝えています。
  1797年創業の老舗のチーズ屋(p.45)や1877年創業の世界最古のファッション・マガジン専門店(p.29)、世界各国の新進作家の作品を扱う、1991年にオープンしたギャラリー・ショップ(p.144)などが建ち並ぶ様子からは、伝統と革新とが息づく街の力強さが感じられます。多種多様な要素がぎゅっと詰まった「小さなロンドン」は、今も多くの人々を魅了し続けています。


  「ビッグ・ベン」などのロンドンを象徴する建造物の多くは、19世紀前半から20世紀初頭まで続いたヴィクトリア朝の時期に完成しました。その意味において、一般的にイメージされる観光地「ロンドン」の源泉は、ヴィクトリア朝時代にあると言えるかもしれません。
  「一九世紀のロンドンに対するわれわれのイメージは、どんな作家の作品にもまして、サー・アーサー・コナン・ドイルが『シャーロック・ホームズ物語』の中で見事に描いたロンドンの情景に負うところが大きい」(p.6)とする本書では、作品からの引用とその舞台となった場所の当時の写真とを並列することで、ヴィクトリア朝時代のロンドンの雰囲気を再現する試みがなされています。『シャーロック・ホームズ物語』だけでなく、ロンドンが舞台となった多くの物語を愛する人々にとって、「ロンドン」は憧れの地であり、物語の舞台を一目見ようと毎年多くの観光客が訪れています。


 「馬車」(p.204)や「鉄道」(p.210)、「郵便配達」(p.214)など、19世紀のロンドンを特徴づける様々な事柄について解説する本書は、世界各地の植民地化、また産業革命後の急速な経済発展などにより繁栄を極めたヴィクトリア朝の光と影を映し出しています。
 およそ80年ほどの間に、人口が100万人から450万人に急増した(p.34)という当時のロンドンは、大気や水質の汚染(p.38)、労働者階級に広がる貧困(p.295)など、多くの深刻な問題を抱えていました。そのような暗い側面は当時出版された小説の題材にもなっており、本書にはそれらの小説からの引用が多数掲載されています。世界中で読み継がれる、ロンドンを舞台とする物語の数々は、歴史ある「ロンドン」の多面的な魅力を今に伝えています。











 

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