本の紹介

海のふしぎ


 入道雲が空高く立ちのぼるこの時期、太陽の強い光を受け、きらきらと輝きながら浜辺へと打ち寄せる波に火照った素足をさらす時のあの気持ちよさは、何物にも代えがたいものです。
  大きな浮輪に身をゆだね、浅瀬に浮かんで波に揺られる心地よさ、深みに入り込んだ時のひんやりとした感触、そして光の差し込む海の中のきらめくような美しさ。砂浜からそう遠くない場所に広がる私たちのよく知る「海」はしかし、全体のほんの一部分にすぎません。
  海中には地域によって多種多様な生態系があり、太陽の光の届かない深海には今もなお人類未踏の地が数多く残されています。今回はそんな知っているようで知らない「海」に魅了された人々の手による3冊の本を紹介します。


 「海」と聞いてどのような風景が頭に浮かびますか。水面の色合いや周りの環境など、みなさんのイメージする海は、きっとそれぞれに大なり小なり違っているはずです。また同じような場所から眺めたものであっても、思い描く天候や時間帯などにより、その印象は全く異なったものになるはずです。そんな流動的なイメージの中心にあるのは、決して静止することのない海の代名詞、時に穏やかに水面を揺らし、時にそこにあるものすべてをのみ込む波の存在です。本書では、海洋物理学者として長年にわたって海を観察してきた著者が、これまでに出会った波の数々を豊富な写真とともに紹介しています。
 本書には、さまざまな波の写真が著者による解説とともに収められているだけでなく、専門家である著者ですら「どのような仕組みで発生したのかわからない不思議な波」(p.59)の写真もいくつか掲載されています。深海に行くまでもなく、「海」は今もなお多くの謎に包まれています。


 水中リポーターとして世界各国の海や川に潜った経験をもつ著者が、ダイビングを通じて出会った生き物たちや海の中に広がる美しい景色について、多くの体験談を交えながら語っています。カリフォルニア湾岸で出会ったラッコの親子(p.102)やマレーシアのシパダン島で出会ったウミガメ(p.75)の話など、読んでいてわくわくするようなエピソードが満載です。中でも、フロリダ半島のクリスタルリバーで出会ったマナティーが体を掻いてもらうために著者にしつこく迫ってくる話(p.109)は、警戒心が低く、好奇心旺盛なマナティーの性格がよく表れていて特に印象的です。
 本書は、「海の中を美しい生き物たちと一緒にゆったりと泳いでみたい」――そんな誰もが一度は思い描いたことのある夢を地でいく著者の尽きることのない冒険心で満ちあふれています。みなさんも未知の世界へ一歩足を踏みだしてみませんか。 


 映画「グラン・ブルー」(1988年公開)のモデルとしても有名な著者が海に、そしてそこに住む生き物たちに強く魅かれるきっかけとなった出来事は、実はこの日本で起こりました。1937年、両親とともに上海のフランス租界で暮らしていた著者(当時10歳)が、夏の休暇を家族とともに佐賀県の唐津で過ごしていたときのことです。いつものように海で素潜りを楽しんでいた彼は、偶然数頭のイルカたちに出会います(p.49)。その時に感じたイルカへの深い共感の念がその後の著者の人生を大きく変えることになります。
 1976年、著者(当時49歳)が素潜りで水深100メートルに到達したとき、そのようなことは生理学的に不可能だと思っていた多くの学者たちに衝撃を与えました(p.26)。またその功績だけでなく、人間に「イルカと同じように水棲能力がある」と信じる特異な考え方(p.31)も世界の注目を集めました。環境破壊の深刻化が国際問題となっている今日、人間と海との深い繋がりを信じ、海と共に生きた著者の姿は、自然との共存をめざす私たちの未来を照らす道しるべとなるかもしれません。 

 
 

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