研究内容

嗅覚忌避連合学習

ナメクジは、食べてみて不味かったものの匂いを覚えることができ、学習するとその匂いには決して近づかなくなります。さらにこの記憶は、一回学習しただけで何週間も続きます。この学習記憶に脳をどのように使っているのか、行動学、分子生物学、電気生理学、組織化学の手法を用いて調べています。

中枢神経系の自発的再生

ヒトの脳は、脳卒中などで損傷を受けると、組織レベルで再生することはできません。しかし、ナメクジの脳は自発的な再生能力が高く、そのもっとも分かりやすい例が、切断された触角の再生です。触角先端部には、神経節や嗅上皮、眼などの神経組織が集まっており、これをゼロから再生することが可能なのです。また、脳自身も神経新生を介して失った部位を再生することができます。

核内DNAの増幅

通常、動物の体細胞の核は、父母由来の1組のゲノムDNAから構成されています。しかし、ナメクジをはじめとする軟体動物腹足類の中枢神経系には、ゲノム全体を2倍、4倍、8倍・・・と倍々に増やすことで大幅にDNAを増やし、タンパク質などの物質合成能を高めているニューロンが多数存在します。​このようなニューロンが何故、どのようにできるのか、調べています。

光感知機構

ナメクジは、暗い場所を好む性質(負の光走性)があります。そして、触角(大触角)の先端には眼が備わっています。しかし、ナメクジは脳を光センサーとして用いることでも暗い場所に行けることが分かってきました。眼および脳を使った光感知により負の光走性が実現されるメカニズムに迫ろうとしています。