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2020.03.20お知らせ
梶山理事長・学長 卒業式式辞
※大学会館での式典が行われた場合、梶山理事長・学長が述べる予定だった式辞を掲載します。



令和元年度福岡女子大学第六十七回卒業証書・学位記及び大学院第二十六回学位記授与式 式辞
 
 福岡女子大学を巣立つ満足感と達成感を持った学部卒業生および大学院修了生の皆さん、御卒業おめでとうございます。「リーダーシップを持ち、国際的に活躍できる人材育成」を大学の教育理念とする福岡女子大学を巣立つ、学部学生250名、大学院生16名の皆さんと、ご家族のかたがたに心よりお慶び申し上げます。また、公務御多用にもかかわらず、卒業式・修了式にご臨席賜りました福岡県副知事 大曲昭恵様をはじめ、御来賓の方々に、福岡女子大学を代表して厚く御礼申し上げます。また、式前に記念演奏をしていただいた九州大学フィルハーモニー・オーケストラの皆さん、学位記授与式を盛り上げる演奏、有難うございました。
 
 ここに居る学生の皆さんが学部四年間あるいは、大学院生として学ばれた福岡女子大学の教育の特徴をお話致します。開放的な空間が広がる、設備の整った図書館は、多くの美術品を所蔵しております。これらの設備と美術品を利用しながら「感性」の授業を受講することが出来た皆さんは、福岡女子大学で学んだということに、誇りを感じて下さい。
 
 現在、福岡女子大学で最も力を入れていることは高等教育の改善です。教育で実行すべきことは、非常に単純なことですが、ほとんどの大学で実行されていません。現在行っている福岡女子大学の教育ユニークは2つあります。第1は授業理解度の深化であり、第2は心、即ち精神文化の醸成です。大学は、高等教育指導の入り口なのに、世界の大学でこれら2つの教育行動案が重要視されていないのは、何故でしょう。第1の授業理解度の深化は、非常に簡単です。このユニークには、3つの行動が不可欠です。福岡女子大学では2018年度より、クォーター制を全学一斉にスタートさせました。全学一斉というのは、日本の大学ではほんど無いと理解しています。第1の授業理解度の深化のための3つの行動のうち、まず第1が授業前の教員と学生の授業内容に対する徹底討論です。教員は何を教えたいか、学生はその授業から何を学び取るか、お互いが理解するまで授業のスタート前の徹底討論をお願いしています。第2、第3の行動は、クォーター制の優れた点を活用することです。クォーター制では、週複数回、同じ科目の授業を受けます。前回の授業内容が頭に残っている内に、次の授業を受けますので、授業内容が有効な連続性として教育効果を上げます。さらに、週複数回の授業があるため、未通知短時間の試験、すなわち、クイズ等を数多く行うことができます。そのため学生は、授業前に復習を毎回きちんとすることが要求され、授業中の緊張感が生まれます。授業中の学生の緊張の無さが、日本の大学で教育効果を生まない理由になっています。福岡女子大学では教育の原点に帰り、授業の理解度深化を教育で実行するため徹底的に努力しています。
 
 次に、福岡女子大学教育の第2の「ユニーク」である精神文化の醸成は、「感性授業」です。「感性」の入り口は、他人の心に寄り添い、他人を傷付けないことです。この中には、他人を思いやる躾の積極的実行と、これに伴う創造的行動が加わります。残念ながら、「感性授業」は必修で無いため、授業を受けなかった方も多いと思います。「感性授業」で習うべきことから、現在日本で数多く起こっている、いじめや、親子のきずなや心の結び付きの弱さから起こる問題点を解決できる糸口を学び取ることができます。皆さんが、社会に出ても「感性」の内容を見つめ直すチャンスは沢山あります。「感性」とは何かもう一度考えて、社会に飛び込んで下さい。
 
 さらに、皆さんが直接目にすることはなかったかもしれませんが、福岡女子大学のここ数年間の教育の質の一つとしての国際化教育の進化は目を見張るものがあります。皆さんがスムーズに留学等の国際活動を行うことが出来るように、教職員の努力で日本学生支援機構からの多額な財政的支援を受けてきました。近年、福岡女子大学は「地方区」から「全国区」に変化し、大学の質である「創造力」と「感性力」を短期間で著しく向上させることが出来ました。このような大学で勉強をすることが出来た皆さんは、非常に幸せであったと、実感して頂きたいと思います。
 
 まず、皆さんが入学して最初に体験することは、全寮制の生活でした。寮は生活の場だけでなく教育の場でもありました。留学生との交流を深め、世界に存在するあらゆる文化・習慣などの多様性を許容する努力や、イングリッシュ・タイムとイングリッシュ・デイに積極的に参加し、国際的素養の入口を身に付ける努力をしましたか?イングリッシュ・タイムとイングリッシュ・デイは、皆さんが決めた規則ですから、自分たちで規則を守ることは、社会人として最低限のマナーです。全寮制で学んだ様々な多様性の寛容が、国際性の豊かな人間性になるための訓練ですし、その中から新しいことを見つけられたらそれが教育に対するイノベーションだと私は信じています。
 
 大学の勉強は、学生自身が自覚して行うものであり、他人から強要されて行うものではありません。自分で問題点を見出し、じっくり考えて答えを出すというデザイン教育の手法の訓練は、大学教育を受ける間に充分身についたことと思います。このデザイン教育の手法を学ぶことにより、自分自身の個性が強調され、最終的に独創性・創造性の発揮に繋がると思います。国際的に活躍すればするほど、「国際的多様性の許容」を理解する必要が増してきます。
 
 福岡女子大学の教育は、皆さんが教育現場で身につけた「基礎学力を活用して社会人として常識ある行動をするための訓練であり、一流大学の学生では当たり前のことです。一九二三年(大正十二年)創立の福岡女子大学の前身である、福岡県立女子専門学校より受け継いだ大学の基本理念「次代の女性リーダー育成」は、社会人となる皆さんが引き継ぐことになります。「リーダーシップを持ち、国際的に活躍できる人材育成」に尽力した教職員に恩返しが出来るよう、自立して頑張ってください。
 
 実学という学問分野だけでなく、感性・精神的文化・倫理学・哲学等から学ぶ、人間性から生まれる知性は、実学とバランスを保つことが出来ます。教育の「実学と知学」「文系と理系」「応用と基礎学」等、教育世界では互いに組み込みを実現するバランス感覚が、私達が成長していくためには不可欠だと、私は信じています。このバランス感覚は社会人として活躍できる人間として重要な素養です。社会人となった皆さんの個人的な努力で、大学教育で足りなかった部分を補って欲しいと思います。
 
 皆さんが常に携帯していた「UIマニュアル・福女大プライド」をもう一度手に取って下さい。福岡女子大学の「大学の基本理念」、さらに「大学のミッション」を「大学の誇り」とする伝統的学問は、学部から大学院まで一貫した高等教育の組織を確立した福岡女子大学の後輩学生へと引き継がれます。輝かしい伝統を持つ福岡女子大学で学び、身につけた能力や経験を発揮し、後に続く後輩たちへの善き道標となるよう、卒業生の皆さんは活躍してください。そのためには、心身ともに健康であることは不可欠です。苦難の待ち受けている社会で活躍されることを願って、学位記授与式の式辞と致します。
 
「大学で学んだ事で、他人を幸せにできるか」
 
 令和二年三月二十日
公立大学法人福岡女子大学
理事長・学長 梶山千里

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