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2020.02.03プレスリリース
うま味添加でおいしく、6割減塩が可能に?!実験室レベルでの基礎研究と一般集団を対象とした全国調査から
 「減塩」は高血圧をはじめ色々な生活習慣病予防に不可欠であり、料理や加工食品の嗜好性を減ずることなく食塩を減らす食環境整備が、国際的にも重要な課題になっています。
 早渕仁美 福岡女子大学名誉教授(奈良女子大学特任教授)は、味の素株式会社バイオファイン研究所との共同研究で、うま味を活用した減塩の研究を続けてこられましたが、この度2つの論文が国際誌(Hypertension Research)に掲載されましたので、紹介します。
 
 最初の論文では、本試験の基礎となるデータとして、うま味成分(グルタミン酸)の塩(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム)の違いを比較し、ナトリウム塩が最もおいしさの評価が高いことを示し、食塩とグルタミン酸ナトリウムの48通りの混合水について官能試験を行い、次の試験に用いる混合水の基礎データを取得しました。
 
 2番目の論文は、全国13都道府県(19施設)20〜80歳男女を対象に実施した無作為化盲検法による官能試験を受けた584名分の結果です。試験溶液は0.3, 0.6, 0.9%の3種食塩水と、それら食塩水にうま味として0.3%グルタミン酸ナトリウムを添加した3種のうま味食塩混合水の計6種類です。3種類の食塩水はいずれも、うま味を添加した方がおいしさの評価が高く、特に0.3%食塩水にうま味を添加した混合水は、おいしさの評価が倍増し、最もおいしいと評価されました(図)。
 
 

 一般的な汁物(0.9%食塩+うま味混合水)に含まれるナトリウム量を基準(100%)とすると、最もおいしさの評価が高かった0.3%食塩+うま味混合水に含まれるナトリウム量はその約40%、うま味の添加で60%の減塩が可能になることが証明されました)。うま味を利用すれば、食塩を減らしてもおいしい料理を提供できることになるでしょう。
 
1) Morita R, Ohta M, Hayabuchi H, Fujitani S, Yoshida S, Matsumoto H, Tsuchihashi T. Quantitative verification of the effect of using an umami substance (L-glutamate) to reduce salt intake. Hypertension Research 2020 (accepted)
 
2) Hayabuchi H, Morita R, Ohta M, Nanri A, Matsumoto H, Fujitani S, Yoshida S, Ito S, Sakima A, Takase H, Kusaka M, Tsuchihashi T. Validation of preferred salt concentration in soup based on a randomized blinded experiment in multiple regions in Japan—influence of umami (L-glutamate) on saltiness and palatability of low-salt solutions. Hypertension Research (published online: 29 January 2020)
 
*2)は、オープンアクセスで配信されていますので、https://rdcu.be/b0Uadから自由に論文をご覧頂けます。
★関連記事が、一般の方向けMedical Tribune https://kenko100.jp/articles/200131005025/に掲載されています。
 
プレスリリース(PDF,277KB)