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2020.01.01お知らせ
2020年 福岡女子大学 理事長・学長からの年頭の挨拶
 福岡女子大学(福女大)の教職員・学生の皆さん、新年明けましておめでとうございます。
 
 2011年の福岡女子大学の教育制度抜本改革から10年目である2020年は、福女大の教育に対して一つの節目の年となります。10年間で教育の基盤を作る努力をしてきましたが、2020年はこの成果を基礎に、教育の創造空間に飛び立つ年にしたいと願っています。教職員・学生が一丸となって、教育の質の向上に向けて努力した結果、福女大は、教育と国際分野で継続してトップクラスとなる組織に育ってきたと確信して良いと思います。10年前の暗い雰囲気の大学に戻ることは、社会的にも許されません。教職員は、自分のためだけに大学があるのではなく、学生の教育や精神文化醸成を支援するという責務を持って、持続的に右肩上りの大学組織の発展に貢献すべきです。教員のための居心地良い大学作りは社会的に誰も認めません。社会は動いており、教育も新しい目標に向かって向上すべきです。基礎学問だからと言って、ほとんど進化のない教育は、社会的に存在しないに等しく、教育を常に良い環境・状態にする努力が教員には求められています。学生に常に寄り添い持続的に質の良い授業を提供する努力をすることが、今の福女大に勤める教員の最低の条件です。
 国立大学では2004年、福女大では2006年に法人化し、他の女子大学との差別化や大学自身の危機感のため、各法人では独自の「ユニーク」を持つ努力をしてきました。法人化以降、学生に対する大学の立場も大きく変化してきました。ある大学では、学生はお客様、ある大学では一方的に教育される存在となってきました。福女大では、教育改革を進めた2011年以降、学生はいくつかの教職員委員会に加わり、大学の経営・運営にも関わっています。学生は大学の組織の一員であると福女大では位置付けています。福女大は、ここ10年間の学生に対する人間力、国際力の教育の過程で、自分で判断して行動する学生育成に努力し、2020年以降は、教職員・学生は切れ目の無い次の向上目標を決め、努力して欲しいと願っています。教育の向上は「限り無い前進」です。この標語は、1966年バンコクのアジア競技大会で使われたスローガンです。このスローガンが今の福女大の教育進化に最も相応しいと思っています。2020年以降の大学の目標に積極的に賛成できない教職員は、自らが提案する努力目標を定めて下さい。自ら提案もしない、大学に積極的に協力もしないとしたら、教職員は「限り無い前進」を目指している大学に居ても仕方が無いと私は考えています。新年から、ちょっと厳しい言葉を述べてきましたが、福女大が置かれている立場は、社会的に非常に厳しい状況にもあると理解して下さい。
 
 2011年以降、福女大では「建学の精神:次代の女性リーダーを育成」という言葉を使ってきました。「次代の女性リーダーを育成」という標語を1923年の福女大の創立時から使っていたと勘違いしていました。森田先生を代表とする委員会で、福女大の創立時の「次代の女性リーダーを育成」に関して検討しました。福岡県立女子専門学校開校時には、いくつかの立派な言葉が残されており、その中には「女性リーダー育成」を実現したいという気持ちが読み取れますが、明確な言葉として残されていません。2011年の福女大の教育改革の過程で、当時の教職員から建学の精神に関して検討され、自然発生的に「建学の精神:次代の女性リーダーを育成」という表現に成ったようですが、大学が正式に決めたことではありません。大学のスタート時の教育の基本理念は何であったか、2019年度に検討しておくべきということで、委員会で検討した結果、「大学の基本理念:次代の女性リーダーを育成」とすることに決めました。今後は、この標語を「建学の精神」でなく、「大学の基本理念」ということで教職員・学生は、その内容を慈しみ実質的に育てる努力をして下さい。
 
Ⅰ.大学の飛躍のために、2019年までに教職員は何をしてきたか。
 2020年以降の更なる福女大の教育・国際化の飛躍は、2011年以降の教職員・学生の努力の積み重ねた成果に基づいています。これら教育、国際化の財産を基に、2020年以降の次の10年間の福女大の発展に結びつける決意をしましょう。そのためには、その基礎となる2019年までの大学の顕著な努力・成果を確実なものにする必要があります。
(1)学生の授業理解度を深める努力
 授業の理解を深めるという大学教育で最も重要な指導を福女大では行っています。福女大は、2018年より全学一斉のクォーター制を実施しています。クォーター制では、学生は同じ科目の授業を週複数回受けていますので、授業の内容が継続して頭に残り、復習・予習を今まで以上に有効に行うことができます。また福女大の特徴は、授業スタート前の教員と学生の授業内容に対する徹底討論です。この科目の授業で教員は何を教えたいか、学生は何を学びたいか、互いに理解した後に、授業がスタートするという世界の大学でもあまり例のない授業前討論を実施しています。更にクォーター制の実施により、クイズ(non-announced exam.)を頻繁に実施できます。その為、学生はクイズの為の準備でウィークデーは、常に復習という緊張が必要となり、クイズは学生の授業内容の理解度を深める実質的結果になっていると確信しています。授業スタート前の教員・学生の授業に対する討論、クォーター制の実施による週複数回の授業、更にクイズの実施による学生の緊張感は、授業内容理解に非常に役立っていると考えますが、2020年度入学の学生が卒業する前に、その効果を学生に対するアンケートでチェックしたいと思っています。
(2)精神文化を持った女性リーダーの育成
 福女大美術館の整備と学生への感性授業の開始は、福女大学生に対する精神文化の醸成・育成への挑戦と受けとめています。精神文化の醸成の結果として生れた「感性教育」を、人間性の確立に使っている大学は、日本にはそれ程多くありません。福女大はこの難題にいち早く取組み、多くの仕掛けをしてきました。福女大美術館には、高価な美術品はありませんが、感性教育に対して、非常に高価な美術品であると理解しています。福女大美術館のお蔭で、文化庁、内閣府、県などと「心」に関する教育で連携することが出来ました。現在は、県と福女大で市民を巻き込んだ「感性」に関する様々な催しを始めています。「感性」授業は、数年後に始める「歴史」授業と共に、日本の大学の教養教育の基幹になると信じています。教職員・学生も、これらの授業に対する充分な理解に努力し、自分自身でその重要性を理解して欲しいと願っています。
(3)教職員の進化と学生の努力
 2018年からの全学一斉のクォーター制の実施に、教職員・学生の皆さんがスケジュール調整に対する苦労を克服されたことに敬意を表したいと思います。クォーター制の実施をポジティブに受け止めた教職員のクォーターサバティカルの提案等いくつかの組織改善の提案があり、大学として責任を持って、今後これらの提案に応えていきます。職員の提案にも注目したいと思います。「情報の教育」の充実のための「”国Cy”教育」の実施や大学が何かを生み出す「0→1大学」の提案等は、今後大学の進化に必ず繋げて行きたいと思います。福女大の教職員が積極的に提案する大学になったことに福女大の進化を確信し、大学構成員の皆さんに感謝したいと思います。更に業務分担がはっきりした教職協働による今後の事務組織改革の効果にも注目したいと思っています。香住ヶ丘地域との連携により多くの相乗効果が表れていることに、留学生も含む学生の皆さんに感謝します。2019年も、国連女性の地位委員会インターンに環境科学科の中尾佐織さんが採択され、2016年の村嶋祐佳さん、2017年の岡坂明日花さんと共に福女大の学生の国際的女性リーダー育成に積極的に参加しています。教職員の提案と学生の国際化活動の積極的参加は、福女大の改革・改善の効果の表れと信じています。
(4)大学ランキング
 上記(1)~(3)に挙げた2019年の教職員・学生の努力は、福女大ブランドとして大学評価を著しく高めています。THE(Times Higher Education世界大学ランキング日本版)によると、福女大の教育・国際化に関しては、非常に高く評価されています。2017年以降、約80校ある日本の女子大学のうち、福女大は、常に1~3位に入っています。上位3校は国公私1校ずつで、関東の2つの大学と福女大です。2020年からこれら3大学での連携を強めたいと願っています。また、日本の大学は約780校(2019年11月現在)ありますが、福女大は常に50位くらいであり、2019年には46位という評価になっています。福女大は非常に小規模な大学ですが、ここ10年間で、ここまで成長したことに、学生も含めた大学構成員は、その結果に誇りをもって良いと思います。更なる前進に向けて、一層の努力をお願いしたいと思います。
 
Ⅱ.2020年以降、大学と教職員・学生は何をする?
(1)教職員・学生の更なる進化
 ここ10年の教職員・学生の努力で福女大の教育・国際化の評価は、世界でも例の少ないスピードで進展してきました。教職員・学生の皆さんが、個人やグループの意見を大学・社会に提案することに慣れてきたことは、教職員・学生の明確な意識改革だと考え、学長の私は非常に誇りにしています。大学の改革・改善が、社会の変化より数倍早い時に、外部から評価を勝ち取ることが出来ます。今後、継続的に福女大が進化するには、今以上の努力とスピードが不可欠です。その理由は、大学が発展・進化する毎に、評価基準値が上がり、従来と同じ努力では、結果的には新しい基準値では低下するからです。社会から見れば、大学の積極的発展・変化が目に見えない限り、評価してもらえません。教職員・学生はこのことを良く理解し、毎年の進化の加速をして下さい。福女大が一休みして、教育・研究を俯瞰する時期はもっと先であることを自覚し、今は努力し続けて、頑張りましょう。
(2)「新しいユニーク」の提案
 福女大は、日本の女子大ではあまり例のない「ユニーク」を提示しながら大学全員で様々な努力をした結果、社会から進化を認められる段階まで発展してきました。しかし、最近では、全寮制を始め福女大の「ユニーク」と同じことを実行・実施する大学が出てきました。ここで「新しいユニーク」の定義を2つ示しておきます。「新しいユニーク」の1つは、新分野・領域での「新しいユニーク」設定です。更に、2019年まで実施してきた「ユニーク」の目標値の高めの設定も、「新しいユニーク」の1つと考えています。
 
 2019年までに福女大が実施した「ユニーク」を下記に記載しておきますが、教職員・学生は、この中のいくつかを選び、自分自身の「新しいユニーク」として継げてください。
 「国際」では、全寮制(留学生比率約33%)、短中長期学生の留学率75~80%、海外高等学校(ベトナム、タイ)との高大連携、ASEAN-EU Consortiumのスタート、WJC(The World of Japanese Contemporary Culture Program)の継続。
 「教育」では、精神文化の醸成(福女大美術館、薪能、ノーベル賞受賞者の高校生向け講演、社会的弱者支援)、感性授業、Language-Café(9ヵ国語)、授業理解度向上の工夫、学生の大学経営・運営参加、福女大留学生の比率12~15%(寮では約33%)、国連女性の地位委員会インターンへの学生参加、女性リーダー・トップリーダーの育成。
 「大学組織」に関しては、委員会終了直後の議事録作成、行動規範等を記載したUIマニュアルの教職員・学生の常時携帯、職場での女性比率の設定(現在、執行部の40%を2023年には50%へ、現在、上位教員(教授+准教授)の35%、将来は50%を目標)、No smoking campus、総床面積90%を2011年以降にキャンパス再整備(床面積を2倍)、100周年記念事業(「女性リーダーシップセンター」と「国際フードスタディセンター」の構築と「福女大フィルハーモニーオーケストラ」の立ち上げ)、従来の学部教育とこの2つのセンターを縦・横軸に交叉して使う文理統合教育。
 これらのユニークの中で、既に「ユニーク」でなくなったものもあります。上記したように「新しいユニーク」の提案と質の向上を含む継続「ユニーク」が「新しいユニーク」と理解し、福女大の「次なるユニーク」に挑戦しましょう。
(3)THE大学ランキングに関しては上述しました。2019年には福女大は、日本の女子大学約80校中、2位でした。福女大の教育・国際化の質は非常に高く、社会的にも認められています。100周年記念事業の社会への理解と協力のお願いの過程で、福女大の知名度は非常に低いことが明らかとなってきました。県内でも正しく評価をされていないこともあります。今まで以上の福女大「ユニーク」の広報・宣伝を国内で行い、福女大の知名度の向上を、大学として努力します。
(4)100周年記念事業の展開
 福女大は2023年に創立100周年を迎えます。1923年に我が国最初の公立女専として福岡県立女子専門学校が開校して以来、13,607人(2019年9月の秋卒業迄)が卒業し、多くの卒業生が国内外で活躍しておられます。当たり前のことですが、各大学の100周年は一度しかありませんので、どの様な仕掛けをするかで次の100年の大学の進展が決まります。福女大は、2つのセンター作りで、研究の質を高めると共に文理統合教育を進めていきます。「女性リーダーシップセンター」と「国際フードスタディセンター」の明確な組織の内容と役割等、今後、検討すべき点が残っています。新しい教育・研究組織をスタートさせるには約2年かかります。この様な事情を考える、福女大の2つのセンターの準備状況は、現時点では満足いく状況ではありませんし、関係者は、この2つのセンターの立ち上げに努力して下さい。
 
 2020年は、福女大の教育全面改革をした2011年から10年目です。大学は10年の時間を掛けて変革し、成果を蓄積しながら、継続的な改革、改善していかないと一流大学の仲間入りは出来ません。今の福女大が今後の100年に向けて将来計画を検討できる時間は、3年くらいの余裕しか残っていません。大学として将来構想とロードマップを教職員・学生及び社会に示します。その為にも、皆さんからの積極的意見や提案を期待しています。教職員の意見と行動は、2020年の業務実績評価にも継げていきます。100周年記念事業に関しても、福女大の構成員であれば、どの様な形であれ、全員参加が義務です。構成員自身のためでなく、学生の将来の活躍の場を深め、広げるためにも、教職員の積極的な努力が不可欠です。大学の存在意義は、教育・研究の質の向上であり、継続的に質の良い教育を提供できる大学して更に前進しましょう。
 
2020年(令和2年)元旦  
公立大学法人福岡女子大学
理事長・学長 梶山千里