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2017.03.22お知らせ
梶山理事長・学長 卒業式式辞
福岡女子大学第六十四回卒業証書・学位記 及び大学院第二十三回学位記授与式 式辞

 
 この荘厳な卒業式の静寂の中で、福岡女子大学を巣立つ皆さんの満足感と達成感を、私は直に感じています。平成二十八年度学部卒業生および大学院修了生の皆さん、御卒業おめでとうございます。「リーダーシップを持ち、国際的に活躍できる人材育成」を大学の教育理念とする福岡女子大学を巣立つ、学部学生二二二名、大学院生十六名の皆さんと、ご家族のかたがたに心よりお慶び申し上げます。また、公務御多用にもかかわらず、卒業式・修了式にご臨席賜りました福岡県 副知事 大曲 昭恵様、福岡県議会副議長 佐々木 徹様、文教委員会委員長 伊豆 美沙子様、福岡県議会議員 長 裕海様代理の長 純子様をはじめ、御来賓の方々に、福岡女子大学を代表して厚く御礼申し上げます。また、式前に記念演奏をしていただいた九州大学フィルハーモニー・オーケストラの皆さん、学位記授与式を盛り上げる演奏、有難うございました。今、ここで読み上げました文章は、皆さんが平成二十五年四月に福岡女子大学に入学された時の式辞を卒業式用にアレンジしたものです。この式辞を使用する理由は、入学に際して皆さんにお願いしたことを思い出していただきたいからです。福岡女子大学での四年間、または、それ以上の年月の学部と大学院教育で、入学時の目標がどの程度達成できたかを、この卒業式で自分自身で評価していただくためです。
 
 まず、皆さんが学部四年間あるいは、大学院生として学ばれた福岡女子大学の現状をお話致します。ここ数年、福岡県支援の福岡女子大学のダイナミックな変貌は、新しいキャンパスで教育を受けた皆さんであれば直に感じることが出来たであろうと確信しています。二〇一三年の教育・研究棟、スポーツキューブ、図書館、地域連携センターの新築から始まり、さらに二〇一六年には講義棟が完成し、今年は本部運営棟が完成致します。キャンパスの再整備は、眼に見える変化であり、皆さんは刻々と変化するキャンパス再編成に感動されたことと思います。開放的な空間が広がる、設備の整った図書館は、多くの美術品を所蔵しており、これらの設備を利用しながら感性を生かした勉強をすることが出来た皆さんは、福岡女子大学で学ぶことが出来たということに、誇りを感じて欲しいと思います。
 
 さらに、皆さんが直接目にすることはなかったかもしれませんが、キャンパスの再整備以外でも多くの変貌がありました。二〇二三年の創立百周年に向けた教育・研究の再構築のための戦略の設定を、教職員の努力で実現することができました。そして、皆さんがスムーズに留学等の国際活動を行うことが出来るように、日本学生支援機構からの多額な財政的支援等、直接目に見えない数多くの進化を遂げてきました。入学試験一つとっても福岡女子大学は「地方区」から「全国区」に変化し、大学の質である「大学力」とまた、「知名度」を短期間で著しく向上させることが出来ました。このような大学で勉強をすることが出来た皆さんは、非常に幸せであったと、実感して頂きたいと思います。 
 
 二〇一三年(平成二十五年)の入学式で皆さんにお願いしたことを、皆さん自身がどの程度、自己変革に努力し、実現したかを、ここで検証してみましょう。何の話だったのか忘れてしまった方もいるかもしれません。しかしながら、社会人になったら「忘れた」という「言い訳」は通用しません。平成二十五年四月の入学式の式辞では、皆さんが四年の間に、福岡女子大学で学び、身に付けることを、ここに居られる卒業生の皆さんにいくつかお願いしております。そのいくつかを思い出すことが出来ますか?
 
 まず、最初の努力は、入学して一年間の全寮生活で何を身に付けるかでした。 寮は生活の場だけでなく教育の場でもありました。留学生との交流を深め、世界に存在するあらゆる文化・習慣などの多様性を許容する努力や、イングリッシュ・タイムとイングリッシュ・デイに積極的に参加し、国際的素養の入口のことを身に付ける努力をしましたか? イングリッシュ・タイムとイングリッシュ・デイは、皆さんが決めた規則ですから、自分たちで規則を守ることは、社会人として必要最低限のマナーです。全寮制で学んだ様々な多様性の寛容が、国際性の豊かな人間性になるための訓練ですし、その中から新しいことを見つけられたらそれが教育に対するイノベーションだと私は信じています。
 
 大学の勉強は、学生自身が自覚して行うものであり、他人から強要されて行うものではありません。自分で問題点を見出し、じっくり考えて答えを出すというデザイン教育の手法の訓練は、大学教育を受ける間に充分身についたことだろうと思います。このデザイン教育の手法を学ぶことにより、自分自身の個性が強調され、最終的に独創性・創造性の発揮に繋がると思います。国際的に活躍すればするほど、「国際的多様性の許容」を理解する必要が増してきます。

 福岡女子大学の教育では、「基礎教育」「自己啓発教育」「社会対応教育」「国際性教育」と、徹底した幾つかの仕掛けを入れて工夫したカリキュラムを設定しています。「創造型デザイン教育」、「国際化と多様性の許容教育」、「自己啓発教育」が、福岡女子大学で学んだ皆さんには身についたと信じています。「学生である前に良い社会人」であることに、努力しましたか?「基礎学力と体力を身につけ、社会人として常識ある行動を取ることができる学生になるよう、努力せよ」ということを、入学時の第二目標として皆さんにお願いしたつもりです。一九二三年(大正十二年)創立の福岡女子大学の前身である、福岡県立女子専門学校より受け継いだ建学の精神「次代の女性リーダー育成」は、社会人となる皆さんが引き継ぐことになります。「リーダーシップを持ち、国際的に活躍できる人材育成」に尽力した教職員に恩返しが出来るよう、自立して頑張ってください。
 
 福岡女子大学として二〇一一年(平成二十三年)の新教育制度への改革以降、大学と教職員は、学生の皆さんが社会人としての常識と知的素養を持てるよう、努力してきました。福岡女子大学での教育として、「他人を思いやり、重んじる教育」「人間としての常識と独創性を組み合わせた教育」等、「感性」が育つように、大学として努力してきました。しかし、学生の皆さんには徹底したこれらの教育が構築・提供できなかったのでは、と反省しています。日本教育の得意な部分である「実学」は、教育の近代化には不可欠ですが、心の教育を重要とする教養重視の教育を忘れてはなりません。専門科目の中に、教養教育を組み込ませた、「体系的に知を知る」教育は、四年間の大学教育の中では、必ずしも完成したものになってはいなかったと、福岡女子大学の学長として反省しています。実学という学問分野だけでなく、感性・精神的文化・倫理学・哲学等から学ぶ、人間性から生まれる知性は、実学とバランスを保つことが出来ます。私は、教育の「実学と知学」「文系と理系」「応用と基礎学」等、教育世界では互いに組み込みを実現するバランス感覚が、私達が成長していくためには不可欠だと信じています。福岡女子大学としては、「実学と知学」のバランス性を充分に学生の皆さんに教育できたかは自信がありません。このバランス感覚は社会人として活躍できる人間として重要な素養です。社会人となった皆さんの努力で、大学で足りなかった部分を補って欲しいと思います。 
 
 国際文理学部は、二〇一五年三月(平成二十六年度)に第一期生を社会へ送り出しました。従来とは異なる、世界で羽ばたく英語を重要視する企業での採用も大変活発であり、社会からの評価は著しく高いものになりました。二〇一五年度にスタートした博士前期過程(修士課程)の第1回目の学生は、この修了式に出席しており、今年、社会に巣立つか、あるいは、大学院博士課程で尚一層の研究・教養を深めていくことになります。大学院高等教育の完成形である博士後期課程は、いよいよ二〇一七年度(平成二十九年度)よりスタートします。高等教育組織の完成は、福岡女子大学の教職員と大学院生の日夜を惜しまない努力と頑張りの賜物だと信じていますが、福岡県教育関係者や社会からの心温まる支援を、私達大学関係者は忘れてはならないと思います。
 
 福岡女子大学の「建学の精神」、「教育の理念」さらに「大学のミッション」や「誇り」とする伝統的学問は、学部から大学院まで一貫した高等教育の組織を確立した福岡女子大学の後輩学生へと引き継がれます。輝かしい伝統を持つ福岡女子大学で学び、身に付けた能力や経験を発揮し、後に続く後輩たちへの善き道標となるよう、卒業生の皆さんは活躍してください。そのためには、心身ともに健康であることは不可欠です。苦難の待ち受けている社会で活躍されることを願って、学位記授与式の式辞と致します。 

 
「大学で身に付けたことを、社会で生かせるか」 
 
平成二十九年三月二十二日 
福岡女子大学 理事長・学長
梶山 千里