新着情報
- 2026.05.13

- 【研究】 福岡女子大学 福岡沿岸の天然ワカメをDNAで識別可能に: 宗像・地島産ワカメに“地元固有の遺伝系統”を発見 ― 産地偽装防止やブランド保護に貢献

福岡女子大学と九州大学の共同研究チームは、福岡沿岸を含む九州各地の天然ワカメをDNA解析により高精度に識別できる新しい手法を開発しました。本研究により、地島と志賀島の天然ワカメが、地理的に近いにもかかわらず、それぞれ独立した遺伝的グループを形成していることが明らかになりました。本成果は、地元の天然ワカメブランドの信頼性を科学的に裏付け、産地偽装の防止や流通の透明性向上に直結する技術として期待されます。
【研究の背景】
日本で流通するワカメの95%以上は養殖物であり、自然の海で育つ天然ワカメは生産量が限られ、希少価値の高い食材として扱われています。福岡県宗像市の「地島産天然ワカメ」のように、地域ごとの特徴を活かしたブランド化の取組も進んでいます。これらのブランドを科学的に裏付け、信頼性を高める手段として注目されているのが、DNAを用いた産地識別技術です。近年、熊本県産アサリの産地偽装問題が社会的な関心を集めましたが、その調査ではDNA分析を含む科学的手法が活用され、産地確認の重要性が改めて認識されました。海産物の流通における透明性を確保するため、遺伝子レベルで産地を特定できる技術への期待が高まっています。
【研究の目的】
天然ワカメは、近い海域で育つほど遺伝的にもよく似ており、一般的なDNA解析では産地ごとの差を見分けにくいという課題があります。そこで本研究では、ワカメの中でもより細かい遺伝的な違いが現れやすい新しいDNA領域を探索し、九州の沿岸域で採れた天然ワカメの集団に違いがあるかどうかを詳しく調べることを目的としました。
【研究方法】
本研究では、福岡県の地島と志賀島、熊本県の天草、大分県の国東半島で採取された天然ワカメ(各地10〜20個体)からDNAを抽出しました。次に、ミトコンドリアDNAの中にある特定の遺伝子領域を、PCR(=DNAを増やす実験手法)によって増幅し、その塩基配列(DNAの“文字列”)を調べました。得られた配列情報を比較し、ワカメ同士の遺伝的なつながりを可視化する図である「ハプロタイプネットワーク」を作成することで、地理的に近い集団の間に違いが見られるかどうかを解析しました。
【主な結果】
ハプロタイプネットワークによる解析の結果、約30kmしか離れていない地島と志賀島の天然ワカメは、それぞれ独立した遺伝的グループを形成していることが分かりました。一方、九州の反対側に位置する熊本県・天草と大分県・国東半島の天然ワカメは、ほぼ同一の遺伝的グループを形成し、DNA解析では区別が困難でした。
【結論と提言】
本研究により、地島と志賀島のように地理的に近い海域で採れた天然ワカメでも、DNA情報を用いることで産地を識別できることが示されました。この成果は、地域ブランド化の科学的な裏付けとなるだけでなく、産地偽装の防止や流通の透明性向上にもつながると期待されます。また、昭和30年代には、天草周辺で採れたワカメが国東半島沿岸へ移植されていたことが、地元行政への聞き取りで明らかになっており、天草・国東の遺伝的類似性は、こうした過去の人為的移動の影響を反映している可能性を示しています。現存する天然ワカメのDNAには、過去の移植履歴が“タイムカプセル”のように保存されており、本手法はその情報を読み解くためにも有効です。
ミトコンドリアDNAの特定遺伝子領域に基づいた天然ワカメのハプロタイプネットワーク。
地島集団(緑)・志賀島集団(赤)・天草集団(紫)・国東集団(黄)
◆発表論文
OTSUBO Mayuko, MASAOKA Riko, MINOBE Sumiko, TESHIMA Kosuke, MORITSUKA Etsuko, INOMATA Nobuyuki, TAKISHITA Kiyotaka. Molecular identification of geographically close
Undaria pinnatifida populations: toward DNA-based branding of wild wakame. Phycological Research (2026) https://doi.org/10.1111/pre.70041
< 本件に関するお問い合わせ >
公立大学法人福岡女子大学 国際文理学部 環境科学科(担当:瀧下清貴)
MAIL:takishita[at]fwu.ac.jp(※送信時は[at]を@に置き換えて下さい。)
WEB: http://www.fwu.ac.jp
TEL:092-661-2411 (代表)
プレスリリース【PDF,616KB】