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11月23日 特別公開講座 しょうぶ学園 福森 伸氏 講演会「創造」×「想像」アートで福祉をソウゾウする

2018年12月10日活動報告

11月23日宗像市役所にて、障がいを持つ人たちが工芸・美術・音楽を中心に感性あふれる創作活動を行う、鹿児島県「しょうぶ学園」の統括施設長 福森伸氏の講演会を開催しました。



「人と人がささえあい、つながりあい、つくりだすくらし」をどのようにして創造してきたのかを伝える、福森さんの深みのある言葉と数々のエピソードに、会場いっぱいに集まった参加者は深く頷き、ときに笑い声をあげながら聞き入っていました。

 
1973年、後に創造的な活動で社会にも影響を与えていくことになる「しょうぶ学園」を福森さんのご両親が創設されました。当時、福祉施設は障がいのある人が健常者に近づくための教育・訓練をするところ、仕事についても与えられる側であるという考えの時代でした。

1983年から福森さんが勤務するようになり、「工房しょうぶ」を立ち上げ、クラフト・ワークを行うようになりました。そこで福森さんは与えられた仕事をするのではなく、社会に向けて何かを与える側になれないかと考えるようになり、試行錯誤の日々が始まります。
福森さんも最初は一般的な考えと同じように、できないことができるようになるために支援しよう、障がい者を健常者に近づけようと考えていました。
しかし、そこに障がい者自身の意志はあるのかと疑問を持つようになります。


 
ある時、木を彫って器をつくっていたら、穴を開けてしまった利用者がいました。
どうすれば穴をあけないかを考え、線を引いたり深さが理解できる道具をつくったりしても、やっぱり穴をあけてしまいます。仕方がないとあきらめたら、その人はすべてを削って木屑にしてしまったそうです。
彼はとても達成感のある顔をしていて、福森さんは気づきました。「彼が穴をあけたのは失敗したのではない。彼はうまくいっていたのだ」。
同じ頃、刺し子をしていた布の工房でも、布が見えないくらいまで縫って、針が刺せないような状態になり「終わりました」と満足している人の姿があったそうです。
福森さんは、その彼らの行為や生まれた物の中に美しさを見つけます。
そして、1993年頃から「しょうぶ学園」はその美しさを社会に見つけてもらうべく芸術活動を広げていく時期を迎えました。


 
障がいのある人をこちら側に引き寄せるのではなく、こちらが近づき、もっと理解すればいいのではないか、その人が望んでしたいことを支援するのが自分たちの役割ではないか。
その気づきにより、それまで「がんばろう」「そうじゃない」と掛けていた励ましや否定の言葉は「そうきたか…!」という感嘆の言葉に変わりました。
 
理性的な左脳で抑えられ、自分らしい素直な表現を失ってしまった健常者と言われる人たちと、揺れることなく豊かな表現を行う障がい者と言われる人たち。より人間らしいのは、気持ちよく生きているのはどちらだろう。一般的である、多数派であることは、いつも正しいのだろうか、優れているのだろうか。
障がいが有るとか無いとかではなく、その人はどうであるのか、人間にとってどうであるのかと考え、心で見て、自分や人をより知ることこそが大切だとする福森さんのひとつひとつの言葉が心に届きました。



休憩と参加者同士の感想の共有を挟んで、後半は福森さんと工房まるの樋口龍二さんのトークセッションが始まりました。
前半に福森さんが話されたような現場を理想とし、いろんな人がその人らしく表現できて認められる場をつくり、それを社会へ繋げていく活動を福岡で続ける樋口さん。
18年程前、お二人が初めて出会ったとき、自分たちがやりたいことが理解されなくて悩んでいた樋口さんに対し、福森さんは「ハングリーでいいじゃないか」と言ってくれ、樋口さんはその言葉に背中を押されたそうです。




 
与える側を目指して創作活動を始めたけどなかなか売れず、評価が得られなかったときから賛同者でいてくれた奥様の存在、信じて自由にやらせてくれたご両親の話、たとえ考えが違っても「あり」と受け止める姿勢。
利用者や職員との日々のエピソード、この日の新幹線の中で思いついた新しいアイデア、民族楽器を中心としたパーカッションとヴォイスパフォーマンスを行うotto & orabuの心地よい不揃いの音の秘訣。
親しい間柄であり、重なる思いを持つ同業者である樋口さんだからこそ引き出せる、福森さんの楽しい話、深い話をたくさん聞くことができました。




 
福祉関係者、文化芸術関係者、障がいを持つ人の家族や当事者、しょうぶ学園の作品のファンの方など、それぞれ何かを求めて会場に集まった人たちに多くの気づきとこれからを生きるヒントを与えてくれた福森さん、樋口さん、本当にありがとうございました。
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