---

HOME 活動報告 7月13日 第1回施設見学「喫茶ポエム福祉作業所」

活動報告

7月13日 第1回施設見学「喫茶ポエム福祉作業所」

2019年08月07日活動報告

梅雨真っ只中の7月中旬。「福岡女子大学アートマネジメント講座」の施設見学をおこないました。雨がしとしとと降りしきるなか、「喫茶ポエム 福祉作業所」へ向かいます。

 

「喫茶ポエム 福祉作業所」は、福岡市南区若久団地にある国内でも珍しい視覚障がい者の福祉作業所です。目が見えないことから、外出や人前に出ることに消極的になりがちな視覚障がい者が、喫茶店での業務を通じて積極的に自己を表現する場として2004年に設立されました。所長の橋口千寿子さんも全盲です。
 


受講生は今日ここで、視覚障がい者の生活を実際に体験し「障がい」に対しての理解や気づきを深めます。まずはアイマスクを着用してのランチ体験です。受講生の前に、「喫茶ポエム 福祉作業所」の日替わりランチがトレイにのって運ばれてきます。メニューはご飯とお味噌汁、サラダ、メイン(エビチリ)、副菜(春雨)、お漬物です。受講生には何の料理がどこに配置されているのかは知らされていません。「いただきます」を合図に、恐る恐るランチがスタートしました。



箸を持ちお皿を持ち上げて、料理を口に運びます。動作の一つひとつがとてもゆっくりと慎重で、受講生は会話をすることもなく黙々と食べ進めていました。半分ほど食べたところで、橋口さんは受講生に今日のランチのメニューを伝えます。「トレイの中を時計と考えてください。12時がトレイの奥、6時が手前、3時が右、9時が左です。1時の方向にサラダがあります。3時にはお漬物、それから…」。全ての解説が終わると橋口さんは続けて、「これらのメニューを完食できたと思う人から、アイマスクを外してください」と声をかけました。
 
受講生は目が見えないからか、感覚を研ぎ澄まします。料理の量が少なくなると箸に引っかかりがなくなり、自分が食べ終わったのかまだ器に残っているのかさえわからなくなる。器に口を近づけて料理をかき込んでやっとのことでランチを完食。アイマスクを外すと「あれ!まだ食べ終わっていなかった」「サラダのきゅうりがトレイの外に飛んでいる!」などさまざまな感想が飛び交いました。


 
ランチ後は、視覚障がいの擬似体験を通して、気づいたことや困ったことを共有します。「そもそも自分に料理が運ばれてきたかどうかがわからなかった」「サラダのきゅうりをかぶと勘違いしていた」「ご飯とおかずのバランスが取れなかった」「遠くの食器の音に敏感になる」など、体験を通じて見えないことでの恐怖心や不自由を身をもって感じていました。橋口さんは、普段からその不自由さを少しでも解決するために、お皿選びや食材の切り方を工夫するといいます。目が見えないことで嗅覚が研ぎ澄まされること、また健常者からの正確な情報の声かけが、何よりの頼りになることをご自身の経験を踏まえながら語られました。
 


休憩を挟み、チラシでゴミ箱を作成します。まずはアイマスクをせず作り方を覚え、その後アイマスクを着用して同じものを作ります。アイマスクなしではすぐにできあがったゴミ箱が、視界を遮っただけでなかなか完成しません。中心の折り線を指で辿りながら綺麗にゴミ箱を作れた人、予定より大きいサイズのものができた人、途中でわからなくなってしまった人など十人十色のできあがりでした。食事と同じく、自分なりに工夫を凝らせば視覚に障がいがあっても綺麗に折れるようになると橋口さんはいいます。できることはなるべく自分でやってみるのを大切にしているのです。





体験後、受講生は「喫茶ポエム 福祉作業所」に通われている視覚障がいを持つ方々と交流をしました。受講生はペアになり、視覚障がいの方と4人グループで日常生活や障がいとの向き合い方について話しを聞きます。あるグループは、受講生がお金の見分け方について尋ねていました。コインよりも判別の難しいお札は、四つ折りや縦折り、半分折など種類によって折り方に違いを付けることで判別するそうです。また、他のグループでは「視覚以外の方法で状況を掴もうとして、脳が発達し記憶力が良くなったような気がする」「無理に点字を覚えなくても音声携帯のおかげで、本を読んだりなど普段の生活も楽しんでいる」という話が交わされていました。受講生は視覚障がいの方のポジティブな考え方や姿勢にとても驚いていました。



最後に、視覚障がいを持った人は外に出るチャンスを失っている人が多いと話された橋口さん。目が見えないことで仕事がしづらくなり、引きこもってしまう。だからこそ「喫茶ポエム 福祉作業所」のような集いの場が必要であり大切なのだと、施設を作って以来つくづく感じられているそうです。「これからもこの憩いの場を大切にしたい」と、講座を締めくくりました。
 


「障がい」と「社会」が共に歩んでいく未来について考えるきっかけとなったことはもちろん、受講生にとっては、今後自分たちで作り上げる企画のヒントにもなった講座でした。
 
PAGE TOP