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活動報告

6月22日 第2回 基礎講座「ワークショップデザイン」

2019年07月09日活動報告

「福岡女子大学アートマネジメント講座」の第2回目が開催されました。今回のテーマは「ワークショップデザイン」です。本学の社会人学び直しプログラムのコーディネーターであり、ワークショップデザイナー・岸智子さんを講師に迎え、ワークショップの定義やコンテンツの組み立て方について実践を交えながら授業をしていただきました。

まずはこれからの授業にふさわしい空間づくりからスタート。プロジェクターに向かって半円状にイスのみを並べたシアター形式、4人掛けのグループワークに適したアイランド形式の2つのレイアウトを作成しました。受講生は椅子や机を持ち上げ、声を掛け合い移動します。



空間ができあがったところで「メンバーを知ろう」と題して、点と点を結ぶ簡単なワークを実践しました。「よろこび」「かなしみ」「いかり」「おどろき」の4つの言葉のイメージを直線や曲線で表現します。各々が思うイメージを描き終えたら隣同士でペアを組み、見比べてみる。「わ!大胆だね」「同じ言葉なのに私とは全然違う線!」など、時折笑い声を交えながら会話が弾みました。
 

 
次は、「六ツ折り自己紹介」です。A4サイズの紙を六ツ折りにして、下段の真ん中の枠に自分の名前を書き、それ以外の5つの枠には自分の好きなことや仕事にまつわるキーワードなどを記入します。その後2人1組になり、相手から質問された項目のみに回答。一人の回答時間が2分間です。通常の自己紹介では名前や出身地、肩書きなど一方的に話しがちですが、この方法を用いると聞き手は知りたいこと知り、話し手も一つの話題に集中して話せます。岸さんは「今みなさんが尋ねられたことは、他人にとって興味があることやあなたの魅力の一つです」と話されました。その後、今日学びたいこと、講座に参加した理由などを「マイテーマ」として、一人ひとりが1分で発表。この場にいる全員の顔と名前の一致はもちろん、これから半年以上に渡ってともに学ぶ仲間の受講意識や考え方を共有しました。



休憩を挟んだ後は、「ワークショップ」という言葉から連想するキーワードについて付箋に一つずつ書き込みます。記入後、教壇のホワイトボードに受講生全員分の付箋を貼りだすとその数はなんと130枚以上に!「誰でも参加できる」「ダンス」「楽しい」などさまざまなイメージが洗い出されたところで、「そもそもワークショップとは」という原点に立ち帰りました。ワークショップとは、言葉の意味を辿ると「工房」や「仕事場」「作業場」など“一緒に何かをつくるところ”。岸さんは教育哲学者・デューイの「人は知識を蓄えて学ぶのではない。体験をしてそれを振り返ることで学ぶのだ」という言葉を引用し、一方的に教えてもらって学ぶのではなく、自らが体験して学ぶ大切さを伝えます。「演劇や美術などのアートやまちづくり、教育学習にも通じる体験からの学びは、ワークショップの根本にあるものです」とワークショップの意義を語り、午前の授業を締めくくりました。




アイスブレイクを入れ、午後のプログラムがスタート。いよいよ3人1組の4グループで実際にワークショップを企画します。岸さんは、新たなワークショップは「興味」と「一人ひとりができること」から生まれると話し、受講生に「偏愛マップ」の作成を呼びかけました。紙全体を使ってとにかく自分の好きなことや興味のあることを10分間書き連ねます。その後はグループ内でマップを共有し、メンバーの意外な一面に触れながら自らの偏愛を見つめ直します。「裸足で歩くこと」「温泉旅」「息子の絵」「猫の匂いを嗅ぐこと」「雨の匂い」など思わずくすりとなる偏愛マップは、受講生たちにとても好評でした。


 

 
その後、偏愛マップを参考に自分が「興味関心を持っていること」と「できること」を3つずつ集約したら、再度グループのメンバーと共有。ワークショップの企画立案にうつります。全員の「興味関心」「できること」が必ずどこかに入っていれば、企画の内容は自由です。今回は費用面や実現可能性は度外視して、妄想・空想も盛り込みながら各グループ30分間で話をまとめていきました。意見が飛び交い着々と企画が定まっていきます。隣のグループに相談してフィードバックを受け、再考時間も取りながら約1時間で各グループの企画が決まりました。
 




ある班は、「和」と「憩いの場」の共通テーマをもとに「月いち お茶会」のワークショップを立案しました。コミュニケーションを楽しむことを目的として、毎月場所を変えて茶話会を催すという内容です。「毎回違ったテーマのワークショップでありながら、『茶話会』というコンセプトはブレないことを大切にした」と話されていました。また、別の班では「すもも」と「小さなものをつくる」というテーマをもとに企画を立案。すももが旬を迎える6月に集まり、すもも愛を語ったり含味したりするワークショップに教室は一層盛り上がりをみせていました。
 


全ての班の発表を終え、岸さんは「ワークショップの企画や実践はひとりで行うには限界がある」ということについて語られました。自分のやりたいことやできることを他人との共通点と結びつけて組み合わせると、一人では思いつかないような企画が生まれます。多様なワークショップを立案することができる可能性について触れられた後、「好き」「ワクワク」という感情は、ワークショップを企画する上で大事なモチベーションだと話し、「今日実践したように、まずは自分がワークショップを楽しむことを大切にしましょう」と各グループの企画にアドバイスを述べられました。
 


講座も終盤に近づいたところで、改めてみんなでワークショップについて振り返りました。ワークショップには仲間や時間、できること、好きなことなど既存のリソースを活用することが大切だということ。そして、岸さんはワークショップの企画・実践には「3つの間」がポイントになると話されました。一つ目は「時間」です。ワークショップはついついアクティビティやコンテンツを詰め込みがちなので、企画段階で本当にそのワークが必要かを問い直す必要があります。目的に沿った時間配分が重要なのです。二つ目は「空間」です。グループの人数や話し合いをする場のレイアウトは目的に沿って決めると、講座の最初に実践した空間づくりに触れながら説明されました。最後の一つは「仲間」です。ワークショップの参加者にどうなってほしいか、どんな時間を過ごしてほしいかを丁寧に伝える、これに尽きると語られました。

ワークショップの導入(チェックイン)は、特に時間をかけてみんなが参加する姿勢が整ってから本体(コンテンツ・アクティビティ)に入ること。わかりやすく流れのある企画を実践したら、やりっ放しではなく丁寧に振り返り(チェックアウト)の時間を取ることが大切だと、岸さんは助言を付け加えます。

受講生からは「対話を楽しむことで自由な発想ができた」「みんなの意見を組み合わせて、一つのワークショップつくり上げることを改めて実感した」「最初は一人で考えて、次に隣の人と話し、最後にチームで企画する。先生が助走をつけてくれたことで最後までしっかりと取り組むとこができた」と岸さんへの感謝の声が多数上がりました。受講生全員が今後の講座にも期待を抱きイキイキとした様子でした。
 
岸さんは最後に、「1日を通してのこのワークショップで、きっとみなさんの仲が深まったはずです。今後の講座をすべて終えたとき、みなさんが集大成として立案する企画を楽しみにしています」と大きな期待を込めてプログラムは終了しました。

岸さんの講座は受講生たちのチームワークを強化し、一人ひとりの参加意識を大きく高められました。
 
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