胚の固定と標本の作成
実体顕微鏡かルーペをつかって標本をつくるべき発生段階の胚を各ステージ10個ずつくらい選ぶ。選んだ胚の発生段階は発生段階表を参考にし、正確なステージの番号を記録しておく。選んだ胚は20〜50%スタインパーグ液を満たしたプラスティックディッシュに移し、ステージを示したテープを貼っておく。
サンプリングする発生段階
胞胚 st.7-9
原腸胚 st.10-12 できればst10-10.5がよい
神経胚 st.17-23
尾芽胚 st. 28-39
オタマジャクシ st. 45~
切片標本は、固定したサンプルを薄く切って染め、透過型の顕微鏡で観察できるようにしたものである。標本そのままでは薄く切ることが困難なのでパラフィンといしょに切る必要がある。そのためにパラフィンに埋め込むのが包埋である。脱水、透徹をおこなったサンプルをパラフィンオーブン中でブタノールパラフィンに移し、次にパラフィンに移してやる。パラフィンの浸透したサンプルはパラフィンといしょに、紙でつくったかたの中に流し込みピンセットで方向を整えて固める。
ブタノールパラフィン(30分)→パラフィン1(30分)→パラフィン2(30分)→包埋
<方法>
- 脱水の終ったサンプルをブタノールの入ったサンプル管ごとパラフィンオーブン(60〜65℃)に入れて20〜30分ほど温めておく。これは、サンプルをブタノールパラフィンに移すときにサンプルの低温でパラフィンが固まるのをふせぐためである。
- サンプル管をパラフィンオーブンに入れると同時にホットプレートの電源を入れておく。
- ブタノールパラフィンの入ったシャーレとサンプルの入ったサンプル管を出して、ホットプレートの上にのせる。
- ピペット1を使って、温めたサンプルをシャーレの中のブタノールパラフィンに移す。サンプルを移すときは、ピペット1の先がブタノールパラフィンにつかないようにして一滴のブタノールと共にサンプルをブタノールパラフィンに移す(図2)。ブタノールを使ったピペット中にブタノールが残らないように、キムタオルに余分なブタノールを吸わせる。
- すべてのサンプルを移し終ったシャーレはパラフィンオーブンに移しを30〜60分かけてブタノールパラフィンをサンプルに浸透させる。
- ブタノールパラフィンとハードパラフィン1のシャーレをホットプレートの上にのせる。
- ピペット2を使ってブタノールパラフィン中のサンプルをハードパラフィン1に移し30〜60分浸透させる。この時は3、と違ってピペットの先はブタノール1の中につけてよい。ピペットが冷えているとパラフィンが固まるので、使用直前にアルコールランプであたためてやる。ただし、ブタノールは引火し易いので、使用したあと、ピペット中にブタノールパラフィンが残っていないように余分なブタノールパラフィンはブタノールパラフィンのシャーレにもどし、それでも残った分はキムタオルに吸わせる。
- 6、7と同様にして、サンプルをハードパラフィン1からハードパラフィン2に移し30〜60分浸透させる。
- 流しに水の入った洗面器を用意する。
- 包埋用の紙の箱の裏に、班の名前(自分の名前でも可)とサンプルのステージを鉛筆で記入する。また、紙の箱の内側には矢印(→)を書き入れる。これは切片を作るときの方向を知るためである。
- 絵の具筆を使って、包埋用の紙の箱にグリセリンアルコールをぬる。
- ハードパラフィン2のシャーレをホットプレートの上に出す。
- 使い古したスライドグラスの上に紙の箱を置き、温めたピペットで箱の2/3ほどまでパラフィンを入れる。13〜15はできるだけ手早くやる。
- 温めたピペット3を使ってサンプルを紙の箱のパラフィンの中に移す。
- 移したサンプルはそのままだと箱の底に沈んでしまって切片が作りにくくなる。そこで、アルコールランプで温めたピンセットを使って、つかんでは持ち上げてはなす操作を繰り返す(この時、サンプルを壊し易いので注意。あらかじめピンセットで小さいものをつかむ練習を少ししてからやったほうがよい。)。そして、最終的には、サンプルが底から少し上の位置でしかも切片が切り易い方向に位置をそろえる。方向の目安として矢印を使う。矢印は、パラフィンが固まった後に箱をはずすとパラフィンに移るので、外からわかる。
- パラフィンの表面が固まる迄少し待って、スライドグラスごと水につけて冷やしてかためる。このとき、ゆっくりとつけないと水がパラフィンの中に入り込んでしまう。また、表面のかたまりかたが不十分だと同様にトラブルに見舞われる。
- 20〜30分ほどパラフィンを固めた後、キムタオルの上で一晩、紙を乾燥させる。
18、乾燥した包埋片は外の紙ごと所定の箱に入れて来週まで保存する。
注意点、
マイクロトームを使って、包埋したサンプルをパラフィンごと薄切りにし、切片を作成する。以下に手順の概要を示す。
- 包埋したサンプルをトリミングする
- アルコールランプで熱したスパチュラを使って、包埋片を台木に取り付ける。
- 包埋片のついた台木をマイクロトームに取り付ける。
- 8μmの厚さで包埋片から切片を作成する。
- 切片の順番を間違えないようにしながら黒い紙の上に並べていく。このとき鼻息などで吹き飛ばさないように注意する。(マスクなどを使ってもよい。)
<トリミング>
- 切片を切る方向を決める。
- メスか片刃の安全カミソリを使って包埋片から余分なパラフィンを切取る。ただし、はじめは整形のためにある程度パラフィンの余分を残して大きめに切っておく。(サンプルの方向がわからなくならないように気をつける)
- かたちを整形して、ミクロトームに取り付けるのに手ごろな大きさにする。台木に取り付ける方向のパラフィンは少し余分に残しておく。
<台木への取り付け>
- トミリングした包埋片を取り付ける台木の面を確認する(方向を間違えるとミクロトームに取り付けられないことがある。)。
- アルコールランプで熱したスパチュラを使って包埋片を台木に取り付ける。
<ミクロトームによる切片の作成>
- ミクロトームをきれいにし、台木を取り付けるところが十分後ろに来るように歯車をもどしておく。
- 台木をミクロトームに取り付け、取り付け台の角度を調整する。
- ミクロトームの刃をミクロトームに取り付ける。この刃は非常によく切れるので取扱には十分注意する。
- ミクロトームのストッパーをはずして、包埋片の先端が刃の直前に来るように刃の位置を調整する。
- 刃の位置を固定し、7〜10μmで切片を作成する。
- 切片はリボン状につながって来るので、筆で支えながら切る。
- 適当な長さになたったら、途中で切片リボンを切って黒い紙の上に順番に並べる。このとき、手でさわったり、鼻息で吹き飛ばさないように注意。
スライドグラスに張り付けた切片はそのままでは、半透明で観察しにくい。そこで、色素で染色し観察しやすくする。今回は染色用の色素としてヘマトキシリンとエオシンを使って染色する。ヘマトキシリンは水容性なので、キシレンで脱パラフィンし、エタノールシリーズで脱アルコールをおこなった後、マイヤーのヘマトキシリンで染色する。エタノールシリーズで脱水し、95%エタノール0.5%エオシンで二重染色をし、キシレンを通した後、封入剤で封入する。染色後の標本では、核がヘマトキシリンで青紫に染色され細胞質はエオシンで赤っぽく染色される。また、細胞内の卵黄の多少や器官によっても染色性が少しずつ異なる。染色時間によっても標本のできがことなるので、本来は最適条件を調べなければいけないのだが、今回は予め決めた時間染色をおこなう
<材料と器具>
<方法>
注意点、