人工受精
準備
人工授精する前日の夕方に、メスに500〜800単位の生殖腺刺激ホルモンを注射しておく。絞り出し法を用いずに、カエルが自分で産み落とした卵を利用する場合(産み落とし法)は付活を避けるために、カエルをMMRやHigh
Salt Barth等の培養液に移し、16℃のインキュベータに入れておく。
A 精巣摘出
- 35mmのプラスチックシャーレを用意する。
- オスのカエルを0.2% MS222水溶液に入れ、20〜30分おく。
- カエルが動かなくなったことを確認する。
- 小さめの解剖バサミで背側に小さな切り込みを入れ脂肪体を引っ張り出す。(精巣は背側にあり、脂肪体にくっついている。)
- 慣れない場合は、腹側から解剖し脂肪体を引っ張り出す。この場合カエルは復活できない。
- カエルを復活させたい場合は、脂肪体を体の中に戻し、切り口を木綿の糸で縫い抗生物質の入った水の中で飼育する。
- カエルを安楽死させる場合は、氷の中に再び戻し、そのまま冷凍庫へ入れておく。
B 精巣の保存
- 精巣を35mmのプラスチックシャーレにとり、1〜2滴の1XMMRをシャーレのかたわらにつける。(直接スタインバークに浸けておくと精子が精巣から抜けてしまう。)
- シャーレの中が乾燥してしまわないように、まわりをパラフィルムでシールする。
摘出した精巣は、湿り気のある状態で冷蔵庫で保存すれば、1週間くらい保存可能である。ただし、だんだんと弱っていって受精率も下がるからなるべくフレッシュなうちに使用した方がよい。
C 精子懸濁液
- 精巣の1/4ほどを切り取り、1.5mlのプラスチックチューブに入れる。
- 1XMMRを200μl加える。
- 小さな鋏をつかって切り刻んで精子の懸濁液をつくる。
D 卵の準備 絞り出し法
- 前日にホルモン注射したメスの中から、産卵管(総排出口)の赤くなったものを選び、水槽から取り出す。
- ペーパータオルで体の周りの水を拭き取ってやる。
- 右手の手のひらがカエルの頭あたりを隠すようにしておいて、親指と中指でカエルをつかんでおなかを押して卵をガラスのボールか60mmのプラスチックシャーレに絞り出す。(カエルが卵を産み出しやすいポイントがあるのでそこを押してやる。極力、無理に卵を絞り出さないようにする。)
- カエルを水槽に戻す。
- 1時間ほど休ませて再び採卵することも可能。
E 産み落とし法
- カエル1匹が入るくらいのふたつきの容器(15X18X12cm)と、2〜3匹が入るくらいの大きめの容器を用意する。
- 採卵予定日の二日前に一匹あたり50~100unitのPMSG(pregnant
mare serum
gonadotromin)*を注射して、飼育水を入れた大きめの容器に移し、カエルが逃げないようにふたをしておく。
- 採卵予定の12〜14時間前に一匹当たり500~700unitのHCG(Human
cholionic
gonadotropin)を注射し、MMRを満たしたふたつき容器に移し、 17℃のインキュベーター中に置く。
- 注射後10〜11時間したら、カエルを室温に移す。
- 容器に産み落とされた未受精卵を集め、充分に水を切り媒精する。
- カエルはしばらく卵を産み続けるので2〜3時間毎に卵を集めて媒精をする。
- 産み始めてある程度時間が経つと段々と未受精卵の質が悪くなり、受精率が悪くなる傾向がある。
*私の研究室では、PMSGとHCGはそれぞれ帝国臓器のセロトロピンとゴナトロピンを使っている。
媒精 INSEMINATION
- 卵塊に精子の懸濁液を1〜2滴加える。
- 5分ほどして、0.1X MMRを数ml加える。
実験形態学