脱ゼリー(ゼリーの除き方)
アフリカツメガエルの胚は、透明なビテリン膜でつつまれ、さらにゼリー層によって保護されている。胚の細胞を直接扱いたいときに、このゼリー層とビテリン膜を除く必要が生じる。そこで、ゼリーはシステイン水溶液で溶かして除き、ビテリン膜はビンセットで剥いて除く。ここでは、システイン水溶液による脱ゼリーの方法を紹介する。
A システイン水溶液の準備
2% Systein in MMR の場合
- L-システイン塩酸塩2gを80mlのMMRにとかす。
- 10N NaOHを加えpH7.6〜8に調整する。
- MMRを加えて100mlにする。
- 18℃のインキュベータで保存(システイン水溶液は、調製した日一日程度は使用可能。シスチンの沈澱を生じるようになった使用できない。沈澱を濾過すれば使用可能な場合もある。)
2% Systein の場合
- 80mlの蒸留水にL-システイン塩酸塩2gをとかす。
- 10N
NaOHを加え(約1.6ml)、pH7.8〜8にあわせる。
- 蒸留水を加えて100mlにする。
- 18℃のインキュベータで保存(システイン水溶液は、調製した日一日程度は使用可能。シスチンの沈澱を生じるようになった使用できない。沈澱を濾過すれば使用可能な場合もある。)
B 採卵
- 新しい水切かごを用意し、慎重にカエルを移す。(なるべく手で移してやる。うまくやると包接したまま移すことができる。)
- 水切についた胚を先の太い駒込ピペットの水流で下に落とす。このとき泡が立たないように注意する。泡が立つと表面張力で胚が壊れてしまう。
- 胚が下に落ちたら、水切をとってバットの中に渦巻状の水流を起こす。
- 胚が渦巻きの中心に集まってくるので、先を切って太くした駒込ピペットで胚を集め、脱ゼリー用のボールに移す。
- 一度に処理する胚はあまり多すぎないようにする。多かったらいくつかのボールに分けてやる。
- 多量の胚の脱ゼリーをおこなうと、システインが処理能力を超えてしまうことがある。
だいたい、処理用のガラスボールに1〜2層に胚が重なる程度が限度。
C システイン処理
- ボールの水をできるだけ少なくする。(このとき胚が表面に浮いてこないように注意)
- 適量のシステイン水溶液を加える。(胚の量が多いときは量も多めにする。)
- 軽く混ぜて静置する。
- ゼリーが溶けるまで待つ。処理時間は、胚の様子を見ながら調整する。
- (処理時間はだいたい10前後が目安だが、温度や処理する胚の量、胚のゼリーの様子によって異なる。長すぎると胚にダメージをあたえるし、短いとゼリーが残って後の処理がうまくできなくなる。)
- 胚と胚の間のゼリーが無くなったことを確認する。(はじめは、胚と胚の間に透明なゼリーがあるために、隙間がみえるが、ゼリーが溶けると隙間がなくなる。)
- 胚をくみおき水で7回ほど丁寧に洗う。このときも水に泡が立たないように注意。
- インキュベータ(18〜23℃)で保存
薬品
○ L-システイン塩酸塩 試薬特級
L-Cysteine hydrochloride, monohydrate
HSCH2CH(NH2)COOH H2O MW:175.64
○ フェノールレッド 試薬特級
Phenol Red C19H14O5S
MW:354.38
○ NaOH
MW:40.0
注意:潮解製がある。水に溶かすと発熱するので、少しずつ溶かす。
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