アガロースゲル電気泳動と核酸の染色
核酸の電気泳動にはアガロースゲルを用いる。当研究室では泳動槽にはMupid2(コスモバイオ)を用いている。ゲルの濃度は数kb程度の核酸であれば、通常1%
程度、数百ベース程度の短いPCR産物などの場合は2%程度、バッファーはTAEでおこなっている。染色は一般的にはエチジウムブロマイドが用いられているが、発ガン性が疑われているので、最近はMupid-Blueで染色をおこなっている。
<検出感度> Mupid-Blue
では0.1ug程度のDNAがあれば検出可能である。
<アプライ量>
検出: 0.1-0.5ug /1レーン
フラグメント切り出し: 最大2ug /1レーン
○ゲルの作成
- 1%
アガロースTAEをオートクレーブもしくは電子レンジで加熱して解かす。
- 電子レンジを用いるときは沸騰して液がこぼれないようにする。
- アガロースが完全に溶けて球状の塊がないように注意する。
- 小さいゲル用には15-20ml 大きいゲル用には30-40mlが必要
- ゲル作成板に1%アガロースTAEを流し込んで、適当なコームをさし、固化させる。
○電気泳動
- 泳動槽にゲルをケースごといれて、TAE
を満たす。このときTAEはゲルが完全に沈んだ状態にしておく。
- 一番左のレーンのウェルには分子量マーカーを注ぐ。
- 二番目のレーン以降は、6X
ローディングバッファーとDNAサンプルおよびTEを混ぜて6μlとしたものを注ぐ。
- 注ぐときにはP20程度のマイクロピペッターを使うが、手もとが震えるようなら左手をピペッターの先の方に添えて支えてやると良い。
- 通常100Vで電気泳動。
- このとき、電流の流れる方向を間違えないように注意。DNA
は-極から+極に向かって泳動する。電源を入れてからしばらくは泳動の方向が間違っていないか見守った方が安全。
- サンプルの分子量によるが、泳動バッファーのBPBのバンドがゲルの2/3程度まで移動したところで泳動を止める。約30分だが条件によって異なる。
○核酸の染色 1 エチジウムブロマイド染色
エチジウムブロマイドは発がん性が疑われるので、使い捨て手袋着用の上、専用の器具を用いて移動させる。エチジウムブロマイドで他の器具が汚染されないように注意する。また、洗浄液も流しに捨てずに活性炭にエチジウムブロマイドを吸着させた後処理する。誤って汚染された器具等は5%程度の次亜塩素酸(ない場合はハイターを薄めたもの)で洗浄する。
- 0.1μg/ml のエチジウムブロマイドTAEにゲルを移す。
- 20-30分程度室温で染色
- 蒸留水で軽く洗う。
- 洗浄水も回収処理する。
- トランスイルミネーターで観察する。
- ゲルの切り出しをおこなう場合はなるべく長波長でおこなう。
- ポリブクロで密封して組換えDNA実験廃棄物として処理
手っ取り早くDNAのチェックだけする場合は、予めゲルにエチジウムブロマイドを混ぜておく。ただし、この場合は、泳動槽も汚染されるので注意。
○核酸の染色 2 Mupid-Blue(アドバンスバイオ)
最近発売された核酸の染色液で安全性が高いと説明書に書いてある。染色時間は1分と短い。ゲルの切り出しも可能だとあるが、試したことはない。
- Mupid-Blue 1mlを蒸留水で50mlに希釈し、適当なプラスチック容器に入れる。
- ゲルを移し軽く振蘯しながら1分間染色
- 70%エタノールで1分間振蘯脱色。これを2回繰り返す。
- 蒸留水で1分間振蘯脱色。脱色を見ながらこれを2-5回繰り返す。
- うまく脱色できたらそのまま観察できるので、スキャナーかデジタルカメラで画像を取り込んでおく。