アフリカツメガエル初期胚からのゲノムDNAの抽出
生物のDNAには遺伝子がコードされている。生命現象を遺伝子から解析するためにはこの DNAを生物から抽出して解析することが重要となってくる。真核生物のDNA は非常に長く、ヒストンに結合して保護されている。長いDNAの全長を切断することなく抽出することは難しいが、途中で短い断片に切断されたとしても構わないならば、ゲノムDNAの抽出は比較的簡単に行える。PCRによる遺伝子の部分的な増幅など、切断されたDNAを使っても実用上差し支えない実験もある。今回は、分子生物学実験で行った植物のDNAの抽出に引き続き、比較的簡便な方法を使って、動物のゲノムDNAの抽出を行ってみる。なお、今回の方法ではRNAも同時に抽出されるので、あとで、電気泳動によりどのバンドがDNAでどのバンドがRNAかを酵素処理によって調べてみる。
ポイント
○ 胚一個体あたり、どのくらいの量のDNAが抽出されるか。
○ 電気泳動後の核酸の染色で明瞭なバンドが観察されるか?
○ どのぐらいの長さのバンドが現れるか?
○ どのバンドがDNAでどのバンドがRNAか?それぞれどのくらいの大きさか?
<方法>
A 材料と器具
○ 抽出バッファー:
1% SDS, 10mM Tris-HCl(pH7.0~8.0), 10mM EDTA(pH8.0), 10μg/ml Protenase K(保存液は2mg/mlで冷凍保存つくるときには最後に200μlに対して1μl加える。)
○ TE: Tris-HCl 10mM EDTA 1mM pH8.0
○ 7.5M 酢酸アンモニウム pH調整の必要はない
○ 中性フェノール:
1. フェノール100gにTE 緩衝液を30mlほど入れて溶かす。
2. 2M Tris-HCl(pH合わせ不要) を2ml,2-メルカプトエタノール02ml,8-ハイドロキシキノリンを0.2g加える。
3. 良く混ぜて溶かした後、上層に水層ができるまでTEを加える。
○ 泳動バッファー: 0.1% BPB 0.1% Xylene cyanol 30%グリセリン(使用時に6倍希釈)。
BゲノムDNAの抽出
1. アフリカツメガエルにホルモン注射をして胚を得る
2. 胞胚から神経胚程度の胚を2匹選び1.5mlのチューブ(エッペン)に入れる。
3. ピペットマンを使って、チューブから水分を除く。
4. 抽出バッファー200μl(一匹あたり100μl)加える。
5. ピペッティングでホモジナイズする。
6. 37℃で1時間おく。
7. 中性フェノールを200μl(一匹100μl)加える。
8. ボルテックスミキサーで良く撹拌する。
9. 15,000rpm 4℃で5分間遠心する。
10. 上清を新しいエッペンに移す。
11. クロロホルムを200μl加える。
12. ボルテックスミキサーで良く撹拌する。
13. 15,000rpm 4℃で5分間遠心する。
14. 上清を新しいエッペンに移す。
15. 7.5M 酢酸アンモニウムを100μl(一匹あたり50μl)加える。
16. エタノールを600μl(一匹あたり300μl)加える。
17. –20℃で20分おく。
18. 15,000rpm 4で5分間遠心する。
19. 沈澱を吸ってしまわない様に注意してエタノールを除く。
20. 70% エタノール1mlを加えて沈澱を洗う。
21. 15,000rpm 4℃で5分間遠心する。
22. 沈澱を吸ってしまわない様に注意してエタノールを除く。
23. 沈澱を乾燥させて20μlのTEに溶かす。(RNA を除きたいときには20µg/ml RNase Aを含んだTEに溶かす。)
C 電気泳動
1. 1%アガロースTAEゲルをつくる。
2. BでつくったDNA溶液の濃度を測定する。
2. 1~2μg程度のDNAを含むDNA溶液量を計算する。5μlを超えないようにする。
3. 5μlから計算したDNA溶液の量を引いた量のTEをエッペンチューブにとる。
4. 泳動バッファーを1μl加える。
5. 計算した量のDNA溶液を加える。
6. 1%アガロースゲル100Vで電気泳動する。このとき電流の極性に注意。(BPBのバンドがゲルの半分を超えるくらいまで泳動)
7. 電源を切ってからミューピッドブルーの入った容器にゲルだけ移し、90秒染色する。
8. 速やかに、70%エタノールで1分間振蘯脱色。これを2回おこなう。
9. 蒸留水で1分脱色(実際はこのときに色素がDNAに結合する)
10. バンドがはっきり見えるようになったら写真を撮る。