胚操作用器具の作成

胚は直径1mmほどと非常に小さく、柔らかくて壊れやすい。そのため、胚の操作には、いくつかの特別の器具を用いる。これらの器具自体、先の細いものや壊れやすいものがあるので、取り扱いには最新の注意が必要である。


胚移動用ピペット(細ピ)

 胚の選別や、移動などにしようするピペット。パスツールピペットの先を卵の直径の1.5〜2倍程度のところで切り、先端をバーナーで熱してなめらかにしておく。オタマジャクシ用には、先の直径を大きめにしたもの(太ピ)を用意しておく。



ピンセット

 主に、ビテリン膜の除去に用いる。市販のピンセットの先端を研いで先がぴったりと合うようにする。ピンセットの研磨自体熟練の技術を要するので、はじめはK-10あたりの比較的固い鋼材のもので研磨を練習する。技術が身についたら、INOX、No.4 などの柔らかいピンセットをハードアーカンサスの油砥石で丁寧に研磨してつかう。
 ピンセットの先端は非常に細いので、折れたり曲がったりしやすいので、取り扱いには細心の注意を払い、使用後は70%エタノールできれいに拭いて、キャップをかぶせて所定の場所に置くようにする。



ヘアループ
 卵の位置を移動させたり、回転させたり、割球解離の手術などで用いる。

  1. パスツールピペットの先を熱して細く引き先端を毛細管上にする。
  2. ナイロン性の糸を差し込み、卵の直径の半分程度のループをつくる。
  3. 液体状のパラフィンにつけて毛細管の中にパラフィンがしみこむようにする。
  4. 室温で固定するまで待つ。


ガラス針
 割球解離に使う。

  1. ガラス棒の先端を熱して細くする。
  2. ある程度細くなったらマイクロバーナーでさらに細く針状にする。


タングステンニードル

割球解離やアニマルキャップアッセイに用いる

  1. 直径0.2-0.7mm程度のタングステン線(ニラコ等で購入)を4-6cmほどの長さに切る。(切断にはラジオペンチかニッパーを用いるが、刃を痛め易いので専用のものを100円ショプ等でそろえた方がよいと思う。)
  2. 10% 程度のNaOH水溶液を用意し、10V程度の交流電源を使って電解研磨を行う。このとき、はやく細くするためには10V程度の高い電圧をかけるが、先端の細さを微妙に調節するためには2-4V程度の低い電圧を用いた方がよい。

     


卵の型
 
穴開き寒天シャーレをつくる型。

  1. 直径1.5〜1.8mmほどのガラス棒を用意して、使用するガラスシャーレの深さより1mmほど短い長さに切る。
  2. 片方の先端を熱して半球状にする。
  3. 厚さ2mm程度のアクリル板を用意し、一辺がシャーレの直径よりちょっとだけ大きい正方形に切る。
  4. 適当な間隔でガラス棒の直径と同じ大きさの穴を開ける。
  5. ガラス棒の先にエポキシ系の接着剤をつけてアクリル板の穴に差し込む。
  6. 先端の長さがそろうように、シャーレの底に1mmの厚さのスペーサーをしき、接着剤が固まる前にガラス棒を差し込んだアクリル板をシャーレに被せる。そのまま固まらせる。


実験形態学