初期胚の調整と決定

 カエルやイモリなどの両生類の胚は卵割期に卵の半分からでも調整して一匹のオタマジャクシまで発生することから、調整能力が非常に高い動物だと考えられてきた。しかし、景浦によるアフリカツメガエルを使った欠損胚の実験(1984,1986,1990)から調整能力には限界があることが示されてきた。
 例えば、胚を半分に切ったとしても、将来の背腹を分ける第二卵割面で切ってできた半胚は、いずれも正常なプロポーションを回復できない。背側半胚は頭でっかちで体長の短いオタマジャクシもどきに発生するし、腹側半胚は、背側の軸構造がほとんど欠損してほぼ球状のまま頭部などを欠損した胚となる。
 調整をおこなって一匹のオタマジャクシが産まれるには、背と腹の割球の組み合わせが必要である。また、動物極側割球と植物極側割球についても一定の組み合わせが必要となる。
 調整が起こる比較的単純はケースとして、右もしくは左半胚の単離培養がある。この半胚はどちらも調整をおこなって、見掛け状正常なプロポーションのオタマジャクシへと発生すす。この場合、背側の細胞と腹側の細胞はどのように調整しあっているのだろうか。
 右半胚の場合、左半分はどの細胞が作っているのだろうか、左半分の背側の軸構造は右半分の背側細胞が作っているのかそれとも、腹側細胞からも協力が得られているのだろうか?左右の細胞の運命はどうなっているのか?右の細胞はやはり右をつくるように決まっているのかなどはあまり明らかになっていない。
 本研究では、半胚や欠損胚をもちいて、調整がおこるときに、どのような運命の調整がおこなわれているのかを主テーマとする。
 また、近年左右性の決定が遺伝しレベルで論じられつつあり、半胚での左右を決定する遺伝子群の発現を調べることによって、初期胚での左右の決定の問題も扱うことを計画している。

正常な尾芽胚(上)と右半胚から発生した尾芽胚(下)


具体的なテーマ例


研究テーマ