平成21年度 福岡女子大学 (中高教諭 国語)免許更新講習内容

 

「国語」に関わる最新研究

 講習内容

「国語」の古典 ( 古文・漢文 ) 及び現代文をめぐって、散文と韻文に分け、さらに時代別に、最近の研究動向を踏まえた文学的・語学的な諸問題を講じていく。このことにより、「国語」教材の取扱いの際に有益となる文学背景などへの造詣を深める。

 

 

 

8 日

時間

授業名

講習担当

内容

 

1限

 

9 : 00

10 : 20

古辞書から日本語を探る

−『類聚名義抄』諸本の和訓・声点をめぐって−

坂本浩一

 古辞書資料群から『類聚名義抄』諸本を中心資料に取りあげる。原撰本系統の図書寮本、改編本系統の観智院本・高山寺本等に掲出される和訓を中心に、古辞書資料を用いた日本語研究における近年の成果と残された課題について述べる。語史・語誌研究資料の面からの考察が主となるが、差された声点のもつアクセント資料としての一面にも簡単に触れたい。

 

2限

 

10 : 30 11 : 50

 

九州の文学資料

ー藤原定家の和歌添削指導ー

 

今井明

 九州は国文学資料の宝庫である。この授業では、中世の歌人・藤原定家が、弟子である或る若者の和歌に添削・指導・助言を加えた資料を用意して、その読み解きをしてみたい。資料名は「長綱百首」。零細なもので、文学史に燦然と輝く和歌作品といったものではないけれども、若者を指導する定家の「先生ぶり」などを通して、文学生成の現場をのぞいてみたい。

 

3限

 

4限

13 : 00 14 : 00

「古文」「現代文」の境界を越える

石井和夫

 「新古今集」「徒然草」「草枕」「失われた両腕」(清岡卓行)「めがねの悲しみ」(円地文子)を横断し、対象との距離、身体条件、自己を取り巻く状況などから発生する、見えないものを想像するロマンチシズムの問題を講じる。

 

5限

14 : 10 15 : 10

『紫式部日記』寛弘五年御冊子つくりの段

田坂憲二

 源氏物語千年紀の由来となった『紫式部日記』寛弘五年の記事を取り上げる。『源氏物語』の成立過程について略述すると共に、御冊子作りで作製されていたのは、具体的にどの巻の可能性が高いか、藤原道長が紫式部に無断で持ち出したのは何であったのか、平安時代に多く作られていた月並み屏風歌との関連を重視することによって何が見えてくるか、など多彩な問題を、短い時間の中に可能な限り盛り込んでみたい。

6限

15 : 30 16 : 50

試 験

(矢野準)

 

 

「国語」教材への新視点

 講習内容

教科書に採択されている国語教材については、作品の一部に留まっていることが多い。本講習では、その作品全体を見通して、新知見からなる読解の方法の提示やテキストの書誌的解説を行い、新たな教授法を考えられるようにする。また、現行の教科書の問題点の指摘や、従来と異なった観点からなる新たな教材観に基づいた教材作成の提言なども行う。

 

 

時間

授業名

講習担当

内容

 

1限

9 : 00

10 : 20

言語遊戯と古典

矢野準

 言語の機能について考え、言語遊戯が鑑賞的機能の中のメタ言語的機能に関わるものであることを述べた後、『伊勢物語』九段 ( 東下 ) 『小倉百人一首』の文屋康秀作歌、 『源順集』、 『徒然草』百三十五段、『続草 菴集』巻四、 『なそたて』、『小野 [ 竹+愚 ] 言虚 字尽』などに見られる言語遊戯の側面に言及し、これらを有機的につなげた副教材の提案を試みたい。

 

2限

 

 

10 : 30 11 : 50

 

連句的発想の文体

 ─細部にやどる古文のレトリック─

 

大久保

順子

  一見散文的に見える『おくのほそ道』のような文章は、「書かれた表層」を要約しても内容を理解できない。古典教材でおなじみの芭蕉・蕪村・一茶の「俳句」や俳文の読解にも、 江戸時代的「俳諧」の感覚を要する。本授業では日本文学史的な視点から、芭蕉や西鶴の文章表現のもつ「俳」の発想について考えていく。

 

3限

 

4限

13 : 00 14 : 00

ショートショート

( 小説の形式 )

石井和夫

「おーい、でてこい」(星新一)「蠅」(横光利一)に共通する小説の形式の問題を講じる。「おーい、でてこい」の原題は「穴」で、横光の初期作品に同じ表題の小品がある。大正期に創刊された「新青年」のショートショート、同時期のコントの流行が、たとえば川端の掌の小説を生んだ。星の感性は「新青年」の作家への関心と結びつく。

 

5限

14 : 10 15 : 10

「訓読」とは何か

月野文子

 教科書に載ることが多い漢籍(論語・桃花源記など)を例として取り上げ、訓点の問題も含めて < 訓読 > という漢文読解の本質的な問題に迫ります。

 いわゆる文法事項の説明とは異なる展開になると思います。

6限

15 : 30 16 : 50

試 験

(矢野準)

 

 

 

 

「国語」教材の講読 ( 事前準備の時間を考え、開始時間を遅くし二日間としました )

  講習内容

古典(古文・漢文)及び現代文に関して、原典を専門的に読み解いていくことにより、「国語」教材に対する読解力と指導力の更なる向上を目指す。基本的には1作品を2時間単位で講読していくこととし、活発な意見交換がはかれるように工夫する。

 

10

時間

授業名

講習担当

内容

 

1限

11 : 10 12 : 30

江間細香をよむ

 

月野文子

 近年は日本漢詩も教科書に載るようになりましたが、大学の漢文の授業ではなかなか取り上げられる機会はないようです。

 そこで、本講座では江間細香の作品を少しまとまったかたちで読むことによって、江戸期の詩人たちの作詩活動のイメージを掴むことができるよう工夫したいと思っています。また、 < 推敲 > の方法についても考えてみます。

 

2限

13 : 40 14 : 30

 

記号読みの方法

―「羅生門」 ( 芥川龍之介 )

  「思ひ出」 ( 太宰治 )

 

 

石井和夫

「羅生門」「思ひ出」(太宰治)梶井の諸作品から摘出される「ぼんやり」がキーワードになることの意味。漱石のほぼ全作品を貫く「憐れ」「同情」、芥川の主要作品が、人生を擯斥する刹那的感動、裏切られた期待(幻滅の悲哀)、神話破壊などに整理できることを確認する。それを形成するキーワードを含む文章を記号化する試み。

 

 

3限

14 : 30 15 : 20

 

11

時間

授業名

講習担当

内容

 

4限

13 : 40 14 : 30

 

 

『源氏物語』澪標巻冒頭

 

 

田坂憲二

『源氏物語』澪標巻の冒頭部分を取り上げて読む。弘徽殿大后、朧月夜、朱雀院の人物像を分析するとともに、その結果を物語に還元する。また、法華八講を光源氏が主宰する背景、太政大臣に致仕左大臣を推薦した理由、朱雀院に皇子が誕生していることの意味、これらを精緻に読み解きながら、文学作品としてどこまで『源氏物語』を読み込めるかということを考えてみたい。

 

5限

14 : 30 15 : 20

6限

15 : 50 17 : 10

試 験

(矢野準)

 

 

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 福岡女子大学 文学部 国文学科 講習担当者(教員)