数理情報科学研究室
研究室構成: 教授 甲斐 裕
助手 藤野友和
− アルミ缶とスチ−ル缶、どちらが環境に優しい? −
環境問題は人類の生存にとって最大の問題の一つとなっています。私たちが快適な生活を追求する反面には、それに伴う環境汚染、環境破壊が進行しています。たとえば、自動車は大変便利なものですが、原料の鉄などの採掘の段階から、加工、組立、走行、そして最後に廃棄されて無くなるまで、の全ての段階(ライフサイクル)で、環境に対して様々な負荷(悪影響)を与えています。このような環境への負荷をできるだけ少なくするには、それらの製品がそのライフサイクルにおいて、どれだけの負荷を環境に与えているかを、客観的に評価(アセスメント)する方式を見つけることが重要になります。現在、様々なやり方が提案されていますが、その研究は始まったばかりです。その中で有力なものの一つが、国全体の経済活動の統計資料の一つである”産業連関表”を基にして、コンピュ−タを使って計算する方式です。この方式の研究と開発が進めば、あらゆる製品のライフサイクルアセスメントが簡単に求められるようになり、環境問題の解決に対する一つの有効な手段を提供することになるでしょう。
I 研究概要
数理情報科学研究室では、数理計画問題の内、主としてゲ−ムモデルを情報科学の観点から定式化し、その解の存在と解法の研究を行っている。また環境科学におけるLCA(ライフサイクルアセスメント)を数理計画問題のモデルの一つとして取り上げ、その手法の研究も進めている。
数理計画問題は、個人あるいは企業等の集団がある目標(目的)を達成しようとするとき、その実行手段(政策、戦略)としてどれが最適か、また最適なものが存在するのか、という問題を数学的にモデル化して研究するものであり、その実際の手法の開発を重点に置くときオペレ−ションズ・リサ−チとも呼ばれている。
この問題の数学モデルの典型的なものとして線形(非線形)計画問題、動的計画問題、ゲ−ム理論がある。はじめの二つが、個人(企業団体)が与えられた条件の下で単純に利益(生産)を最大化する政策(手)を見つける問題であるのに対して、ゲ−ムは複数人(団体)が利益を競うものだから、行動の結果は他の者の行動によって左右され、利益を最大化する最適政策をつけるのは簡単ではない。例えばカ−ドゲ−ムでは、自分の手に対して相手(他)がどういう手を打つかによって勝ち負けが決定する。さらにカ−ドゲ−ムのうち、ブリッジなどでは、いくつかの段階のプレーを経て勝負が決着し、各段階では前段迄の情報を利用してより有効な手を打つようにする。このように、はじめは相手の手に関する情報が与えられず、段階的にプレ−してそこから相手の手に関する情報を読みとり、その繰り返しで何度かプレーを繰り返して、最後に勝負が決定するゲ−ムを、部分情報多段ゲ−ムと呼ぶ。本研究室では、部分情報多段ゲ−ムを定式化し、最適戦略の存在に関して研究を行っている。この部分情報ゲ−ムは実際の企業間競争において、販売戦略を決定する場合などに応用される。
数理計画問題は、基本的には制約条件下における最適化問題としてとらえられる。今日の環境問題において、人の活動の環境に対する負荷を評価しようと考えるとき、その多くは数理計画の手法によってモデル化が可能だと考えられる。現在、学部学生の卒業研究において、数理計画法の理論を応用し、産業連関表のデ−タを用いて、商品のライフサイクルアセスメントを行う手法の研究を行っている。
II 研究テ−マ
1 部分情報ゲ−ムの解の存在
2 多段ゲ−ムの数値解法
3 数理計画法に基づく LCA の手法
III 所属学会
日本数学会、日本オペレ−ションズ学会
IV 研究発表、論文
1 Kai Y
Two-person zero-sum multi-stage games with partial information onaction
spaces.
17th International symposium on mathematical programming (held atAtlanta, USA.
) Aug. 7-11 (2000)
2 Kai Y
Two-stage two-person zero-sum games with lack of information ondisjoint
action spaces.
Bulletin of Faculty of Home Life Science, Fukuoka Women's University26: 21-24
(1995)
3 Kai Y
Two-person two-stage repeated games with lack of information onaction
soaces.
Bulletin of Faculty of Home Life Science, Fukuoka Women's University24: 55-58
(1993)