無機化学研究室

 

研究室構成: 教授  合原  眞
       助手  田中 筆子
       4年生 6名

− 身近な環境問題に見られる化学反応を考える −

 科学技術の進歩は、私達に豊かで便利な高度化した生活をもたらしましたが、同時 に地球を構成している物質系のバランスを崩しています。大気汚染、水質汚濁などで あり,酸性雨、オゾン層の破壊、地球温暖化など地球規模のものに拡大しています。

 大気汚染や酸性雨による文化財や建造物への影響,土壌の酸性化が各地で見られて います。酸性雨の成分の化学分析、銅の溶解機構などについて検討することはこれら の現象に知見を与えます。また土壌の酸性化による土壌粒子からのアルミニウム溶脱 反応に関して、錯体化学の面から有機物による解毒作用など検討しています。

 環境問題との関連で二酸化炭素の有効利用が社会的に要求されています。二酸化炭 素を固定を行うプロセスは、電気化学的反応,熱化学触媒反応,光化学反応などあり ます。このうち電気化学的反応を適用して,二酸化炭素を還元して有用物質へ変換す ることに取り組み、有効な電極素材の開発など行っています。

 

I 研究概要 

 本研究室では無機化学、分析化学、電気化学などの観点から環境に関する基本的問題に取組んでいる。電気化学的還元による二酸化炭素の有効成分への変換、酸性雨の銅製建造物・土壌への影響に関する研究、植物による有機酸の放出による 解毒作用に関する研究、単分子膜の透過性の研究などを行っている。

 近年、地球を構成している物質系のバランスが崩れてきている。大気汚染、水質汚濁などの環境の悪化であり,さらに地球温暖化、酸性雨、オゾン層の破壊など地球規模のものに拡大している。

 地球の温暖化に関連して、二酸化炭素の有効成分への変換に関する研究では、電気化学的方法を適用し、二酸化炭素を利用価値の高いエチレンなどへ変換するための最適条件を求めている。二酸化炭素の固定化では各種方法が提案されているが、電気化学的方法では従来、直流電解法が用いられてきたが、本研究ではパルス電解法を適用している。Cu(・)イオンの存在下での銀電極が、CH4とC2H4の高い生成効率を得るのに有効であるので、生成効率の最適条件を銀電極で検討し、さらに炭素電極・合金電極の適用も行っている。

 酸性雨の銅製建造物や文化財への影響に関する研究は、その材質、表面形状や気象因子の影響、雨のpH、雨に含まれているイオンや種類などの多くの面から検討する必要がある。銅製建造物の溶解について現存の銅製屋根を持つ建造物とモデル屋根との2箇所で観測している。酸性雨の成分のイオンクロマトグラフィーなどによる化学分析を始めとし、銅製建造物の溶解について溶解の機構等について検討し、銅溶解生成物の化学組成は表面分析の手法で解明している。また土壌の酸性化による土壌からの Al の溶出に関するものとして、植物による有機酸の放出による 解毒作用について錯体化学の面から研究している。土壌の酸性化により土壌中の Al (・)イオン濃度が増加し、植物の生育を阻害することが指摘されている。植物によっては、根から有機酸を放出して、根圏の有毒 Al を錯体として解毒する。有機酸としては、クエン酸・リンゴ酸等 が放出されることが報告されている。 Al(・)イオンとこれらの有機酸との錯体のイオン種と安定度を求め、酸性領域での錯イオンの状態について検討している。

 また、生体膜のイオン透過機構との関連で金電極上にアルカンチオール膜を生成させ、その透過性、吸着量などを調べている。
 

 

II 研究テーマ

 1 各種電極を用いる二酸化炭素のパルス電解還元 
 2 酸性降下物による銅製建造物の溶解と土壌中での銅イオンの挙動
 3 有機酸存在下でのアルミニウム溶存状態の研究 
 4 自己集合法、Langmuir-Blodgett法による混合単分子膜の研究

 

III 所属学会

 日本化学会、日本分析化学会、アメリカ化学会

 

IV 共同研究

「カナダとの二国間共同研究
  電気化学的・光化学的還元によるCO2の有効成分への変換」
   九州工業技術研究所 小松将博研究室長 吉田章研究室長
   九州大学理学部   竹原公助教授
   カナダ国立研究機構 Dr. Mac Dougal (Canada NCR)

「酸性降下物の建造物への影響」
   九州大学理学部   横山拓史助教授

 

V 研究発表など

1 Komatsu M. and Aihara M.
Electroreduction of CO2 on copper and carbon electrodes by pulsed electrolysis.
Japan-Canada Seminar on CO2 Reduction NRC, ICEP(1999.9)

2 Takehara K., Aihara M., Miura Y. and Tanaka F.
An ion-gate response of the cystein-containing dipeptide monolayers formed on a gold. The effects of alkaline earth ions
Bioelectrochem. Bioenergetics 39: 135(1996)

3 Takehara K.,Takemura H., Aihara M. and Yoshimura M.
Charge-selectivity of the monolayer modified gold electrode for the electrochemical oxidation of catechol derivatives
J. Elctroanal. Chem. 404: 179(1996)

4 Aihara M. and Mori N.,
Flow injection study of europium(III)-benzoyltrifluoroacetone -trioctylphosphine oxide system in micellar solution
J. Flow Injection Anal. 10: 236(1995)

 

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