ビテリン膜の除去
孵化前の初期胚はビテリン膜で包まれている。ビテリン膜が周囲から圧力をかけるため、本来前後軸方向に伸長をはじめた神経胚でも、外部から見ると球形である。本来の初期胚の形態を知るためには、ビテリン膜を除く必要がある。
また、外植片をつくったり、割球へのマイクロインジェクションをおこなうときに、ビテリン膜を除く必要のある場合が生じる。そこで、ここではビテリン膜の除去方法について述べる。
<トリプシン処理>
ビテリン膜を除くには後で述べる、先の鋭いピンセットを使ってむく方法があるが、熟練を要する。そのため、神経胚や尾芽胚については蛋白質の分解酵素であるトリプシンを使ってビテリン膜を除く場合がある。
- 選んだ卵を0.5%トリプシン100%スタインバーグ液(pH8.0)で20分処理する。
- (時間は様子を見ながら加減する。)
- 100%スタインバーグ液で3回洗う。
<ピンセットによる除去>
先のそろったピンセットを利用して、ゼリーを除いた胚のビテリン膜をむくことが可能である。この方法は熟練を必要とするが、一度覚えてしまうと簡単である。特に、卵割期の胚などでは、トリプシンなどの薬品に弱いため、この方法を用いる。割球解離やマイクロインジェクションなどに有効な方法である。
- 100%スタインバーグ液を満たした寒天プレートに胚を移す。
- 片方のピンセットで、ビテリン膜をつまむ。
(ピンセットは胚の表面に対して垂直になるようにするとつかみやすい。)
- もう一方のピンセットで、先ほどつまんだビテリン膜の部分をつまむ。
- 両方のピンセットを反対方向に引っ張ってビテリン膜をむく。
こつ:
- ピンセットは、先を鋭くすることにこだわるより、先がきちんと合わさることをこころがけて研ぐとむきやすいものができる。
- 卵割期の胚では、動物極付近にビテリン膜と胚の細胞膜の間に隙間ができるので、ここをつまむとむきやすい。
- 胚の一部分だけを利用する場合(例えばアニマルキャップアッセイなど)は、傷つけても良い部分をつまむとよい。
実験形態学